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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

過度な減塩は危険&体に害!「塩は高血圧の原因」はウソ?精製塩はダメ、良い塩とは?

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事

体にとって良い塩とは

 ところで、筆者がいう良質な塩とは、決して「値段が高い塩」という意味ではありません。値段が高くても質が高くない塩は数多く売られています。「フランス産だからいい」「チベット産だから間違いない」「南米産はおいしい」などということもいえません。そのほとんどは、販売側の作り話で、価格や宣伝文句に惑わされず良質なものを選んでいただきたいと思います。嗜好品のように、いろいろな塩を使ってみることに反対はしませんが、日常的に料理に使う塩は厳選するべきです。それは、私たち自身の健康に直結するからです。

 では、どんな塩が良質な塩なのでしょうか。それは「適度にミネラル分を含んだ海塩が最高」というのが筆者の持論です。物質を細かいレベルにまで分けていくと、最終的には元素になります。それはミネラルと呼ばれるものです。ミネラルは地球上に存在する最も細かい分子で、それ以上には分解できません。地球上には92種類のミネラルが存在するといわれていますが、そのミネラルを組み合わせて地球上のすべての物体が出来上がっているのです。

 さらに、約30種類のミネラルで生物はできているといわれていますが、人間が生きていくために、どうしても体内に取り込まなければならない成分が、「必須ミネラル」と呼ばれるものです。マグネシウム、カリウム、カルシウム、リン、硫黄、ナトリウム、塩素、セレニウム、銅、亜鉛、コバルト、鉄、ヨウ素、クロム、マンガン、モリブデンの16種類で、これらすべてを含んでいるのが海水です。

 海水の組成は驚くほど人体のそれと似ているのですが、海水をそのまま飲めばいいわけではありません。そのまま飲んでしまうと、マグネシウムやカリウムなどのいわゆる「ニガリ成分」を体内に摂りすぎてしまうからです。それを回避するために昔から製塩という技術があったのでしょう。製塩のプロセスで、余分なニガリ成分を少し落として、理想的な塩がつくられてきました。最も重要なのは、良質な塩を適度に摂ることによって、私たちは体のミネラルバランスを整えているということです。だから、ミネラル分を適度に含んだ塩が必要なのです。

 しかし最近では、イオン交換膜法という技術によって塩素イオンとナトリウムイオンだけを抽出しています。この製法では、塩化ナトリウムの純度は高くなりますが、他のミネラルを含まない偏った塩になってしまっているのです。

「塩が高血圧の原因」はウソ?

 減塩に取り組んでいる人は、おそらく「塩が高血圧の原因」で、「高血圧は諸悪の根源」という説を妄信していると思います。その根拠になっているのは、二人のアメリカ人の研究によるものです。そのうちの一つは、1954年に行われた医学者、ルイス・ダール博士による疫学調査です。日本人の食塩摂取量と高血圧発症率の関係を調べたものですが、そこには青森から鹿児島までのデータがあり、それによると鹿児島の人は一日平均14グラムの食塩を摂っており、高血圧発症率は20%。青森の方々は一日28グラムの食塩を摂取しており、高血圧発症率は約40%。どちらの結果も、青森は鹿児島の2倍です。そこから「塩は高血圧、ひいては脳卒中の原因になる」という結論が導き出されることとなったのです。

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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