信者になると薬の副作用が無視できなくなる
こうして特定の薬を飲んで条件付けをしてしまうと、ほかの薬では期待感が得られないため効かなくなってしまいます。そのため、頭痛のような痛みを止めるには、特定の薬でなくてはならないのです。「決め打ち」「指名買い」はここから生まれます。信者の誕生です。ここまでくると、同じパッケージの偽薬なら効いてしまうと考えられます。日本の医薬品に偽薬はないので、薬効のある医薬品を飲み続けることになるのです。
頭痛薬に含まれる消炎鎮痛薬は、想像以上に副作用が強い薬です。件数は少ないですが、スティーブンス・ジョンソン症候群のような重い症状が出ることがあります。薬剤性肝障害はアセトアミノフェンを含む頭痛薬に起こります。
有名な副作用としては、胃が悪くなるという症状があります。胃の血流を悪くする効果があるので、食べ物や消化酵素で傷ついた胃を修復するのに時間がかかってしまうのです。修復が間に合っていないところに次の食べ物が入りますから、さらに傷ついてしまいます。それと同時に薬自体は酸性なので、酸の力で直接、胃を破壊していきます。信者になるくらい長期に飲んでいると、その効果は大きくなっていきます。
このほかにも、腎臓の血流を悪くする効果があり、腎臓の働きが悪くなってしまいます。血液検査をすれば肝臓や腎臓が悪いことはすぐわかります。市販薬の場合、こうした経過観察ができないので、知らず知らずのうちに悪くなっている可能性があります。肝臓や腎臓の異常について自覚症状が出る頃には、症状は進んでしまっていて、治療が難しくなります。
市販薬では、頭の重さをすっきりさせる目的でカフェインが配合されているものがあります。このカフェインには依存性があります。カフェインを大量に含む「エナジードリンク」の飲みすぎで死亡した例もあります。
解熱鎮痛剤の「イブA錠」(エスエス製薬)では1回分の量に80mgのカフェインが含まれています。ドリップコーヒー1杯分と同じ量です。やっかいなことにカフェインの摂りすぎによって起こる症状が頭痛なので、依存と知らず頭痛だからとさらに薬を飲んでしまう可能性があります。
目安は1カ月1箱
「バファリンA」(ライオン)や「ノーシン」(アラクス)を常備薬としている家庭も多いため、大容量包装があるのですが、一般的には1箱が1カ月で使い切られるように包装が設計されています。月に10日以上頭痛で鎮痛薬を飲むような場合は「慢性頭痛」だと考えられるので、専門治療が必要となってきます。「薬物乱用性頭痛」の可能性もあります。頭痛外来を受診して原因を調べてもらってください。
「バファリンA」は1回2錠、1日2回まで服用できるので、40錠包装1箱が1カ月も持たないというのは明らかにおかしいです。「ロキソニンS」(第一三共ヘルスケア)は12錠包装で、1日1錠、症状が重い場合は1日2回を上限とされています。第一類医薬品なので常備薬ではなく、大容量包装はありません。
繰り返しになりますが、1カ月で1箱以上服用するような場合は、市販薬で対応できる頭痛ではないので、病院で受診するようにしてください。
(文=小谷寿美子/薬剤師)