市販の総合感冒薬の恐ろしい話…副作用で死亡例も:外箱と添付文書は絶対捨てたらNG
レジを打ち「お大事に」と頭を下げた瞬間に、患者さんは帰られました。頭を上げるとレジカウンターには今さっき包んだ紙袋とレシート、薬の外箱と添付文書が残されていました。投げ捨てたと言ったほうがいいでしょうか、紙が散乱していたのです。買ったそばから箱を開けて、薬だけ持って帰ったのです。あまりの「瞬間芸」に何もできず、今度こそ全部持って帰ってほしいと視線で追っかけました。
紙袋を破り、箱を開けて中の薬だけをポケットやカバンに入れるのです。誰がそんなことをするのか。毎日のレジ打ちで観察をした結果、30~40代の男性、そして50~60代の女性に多かったようです。統計を取っているわけではないので、厳密にみて正しいかどうかはわかりません。「一人でも多くのレジを打て!」と当時の店長から圧力があったので、統計を取っている時間はもちろんありませんでした。
添付文書には、薬を飲むのに必要な情報がすべて書かれています。時間の関係ですべての情報を販売前に伝えられるわけではありません。だからこそ、添付文書を持っていて必要なときに読み返せるようにしてほしいのです。今はインターネットで添付文書をすべて見ることができます。だから紙の情報を持っていなくていいという意見があるかもしれません。紙でもパソコンの画面でもいいので、すぐに読める状態になっていることが必要です。
副作用については代表的な事柄を伝えることは時間的に可能ですが、あまりに多いのですべては伝えていません。そこで添付文書を読んでほしいのです。すべて書いてあります。
特に総合感冒薬は配合成分が多いので、それだけ副作用の種類が多いのです。
「それでは副作用について説明します。発疹・発赤、かゆみといった皮膚症状があります。吐き気・嘔吐、食欲不振といった消化器症状があります。めまい、頭痛といった精神神経系の症状があります。泌尿器系では排尿困難の副作用があります。ほかには、顔のほてり、異常なまぶしさ、過度の体温低下があります」
ここまででお腹いっぱいですよね。もしこれを薬局のレジで口頭で説明すれば、「いいから早く薬を飲んで寝かせろ!」と患者さんからお叱りを受けると思います。さらに「副作用のうち、死に至る可能性のある重い症状についてこれから説明をします。肝機能障害ですが、これの初期症状は……」ときたら、「いい加減にしろ!」と怒られると思います。