市販の総合感冒薬の恐ろしい話…副作用で死亡例も:外箱と添付文書は絶対捨てたらNG
だから薬剤師は患者さんに対して、添付文書を読んでもらうことを前提にポイントだけ説明をして薬をお渡ししているのです。レジカウンターに置いて帰ってしまってはこの前提が崩れてしまいます。風邪で熱が出ていて薬を飲んでいたら、少しは下がってきたけどまた上がってしまって、全然治らないという症状が出たらどうしますか? 風邪の治りが悪いと思って薬を飲み続けますか?
添付文書を読むと肝機能障害と腎機能障害の初期症状に「発熱」とあります。副作用かもしれないと気付くことができれば対処ができます。しかし、添付文書を読んでいないとこの副作用に気付くことは難しくなります。「風邪をひいてこの薬を飲んでいたのですが、2日間飲んでいるのに熱が全然下がりません」と言って受診すると、医師の判断は副作用なのか単に効かないだけなのか血液検査をしてみようとなります。肝機能障害や腎機能障害が起こっていれば血液検査でわかります。
市販薬のなかで副作用の件数が最も多いのが、総合感冒薬です。副作用のなかでも死亡例や死に至らなくても重い症状が出た例が最も多いのも総合感冒薬です。市販薬のなかで一番なじみがあるものだけに、注意が必要です。
添付文書で命拾い
購入した薬について問い合わせるときは、購入した店またはメーカーの連絡先に電話をするよう添付文書に書いてあります。そこが買った店かどうかの証明にはレシートが必要です。レシートもレジカウンターに置いて帰ってしまうと証明できません。
以前私が勤務していた大手ドラッグストアチェーンでは、防犯カメラの映像を検索して該当人物かどうか検証していました。さらに該当レシートをPOSレジデータで検索をかけて見つけ出します。この作業に30分程度かかっていました。一方、まちの薬局では防犯カメラの映像検索はできません。POSレジではないので、検索をかけることもできません。
しかし、添付文書を薬局に持ってきてもらえれば、この薬を飲んだという証明にはなりますから、薬剤師は患者さんの問い合わせに答えることが可能です。私が担当した患者さんで副作用が疑われたため、メーカーに問い合わせてすぐに受診をしてもらったことがあります。ちなみにこの方の治療費はメーカーから補填されました。
外箱には、添付文書には書いていない重要な情報があります。それは使用期限と製造番号です。PTP包装(押し出して薬を取り出す包装)の場合は、外箱を開けても使用期限までぎりぎり薬を使うことができます。薬は製造番号ごとに管理されています。市販薬ではほとんどないのですが、この製造番号に不具合があったから回収したいということがあります。そのとき外箱があればすぐに回収できます。しかし外箱が手元になければわからないので、知らずに飲んでしまうかもしれません。
副作用は高い頻度で起こるわけではありません。だから必要ないと捨ててしまうかもしれません。しかし、本当に副作用が起こったときには、適切な処置を早くする必要があります。そのためには添付文書と外箱を手元においておくようにしてください。
(文=小谷寿美子/薬剤師)