健康に気を遣い、糖質やプリン体など一部の成分がカットされているアルコール飲料を飲んでいらっしゃる方、血糖値を気にされて、ビールやワインなどの醸造酒ではなく、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒を選んで飲んでいらっしゃる方も多いと思います。
しかし、お酒を選ぶときに、糖質やプリン体を気にしても、アルコールのカロリーやアルコール度数を気にされない方が、少なからずいらっしゃいます。そういった方の多くは、「お酒に含まれるアルコールは、エンプティカロリー(カロリーがない)なので、アルコールそのものは太る原因にならない」という認識をお持ちです。
アルコールがエンプティカロリーといわれる所以は、炭水化物、脂質、たんぱく質といった栄養素とは異なり、栄養がないため体内に蓄えられることなく、すべてがエネルギーとして使われるということから、そう呼ばれるようになったようです。
しかし、本当はどうなのでしょうか。
確かに、アルコールが適量であれば、アルコールそのものが体脂肪になる可能性は低いと考えられています。しかし、飲酒量が適量を超えてしまえば、炭水化物、脂質、たんぱく質と同じように、アルコールが体脂肪に変化してしまい太る可能性が高くなります。
アルコール代謝のメカニズム
では、この理由を明らかにするために、まず適量の飲酒を行ったときのアルコール代謝のメカニズムをみていきましょう。
アルコールは、気体になりやすい性質があるため、その一部は代謝を受けずに呼気になったり、代謝されずに尿からそのまま排泄されます。アルコールの大部分は肝臓で代謝され、カラダにとって有害なアセトアルデヒドに変わり、摂取したアルコール全体の約30%のエネルギーは、この時に使われています。
そして、アセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水酵素により酢酸となります。酢酸は、クエン酸回路というエネルギーをつくる回路で、二酸化炭素と水に分解され、アルコールは無毒化されます。この過程において、アルコール全体の約70%のエネルギーは消費されます。
適量の飲酒量であれば、こうしてアルコールのエネルギーはすべて使われると考えられています。
適量の飲酒量は?
ところが、適量を超えた多量の飲酒になると、アルコール代謝が効率よく働かず、アルコールの代謝過程で生成された酢酸は、二酸化炭素と水に分解されずに、中性脂肪がつくられてしまいます。そうなれば、血中に中性脂肪があふれ、体脂肪へと変わっていく可能性が高くなります。