木下医師、部下に「障害者」「俺を誰だと」とパワハラ…過去のコンプレックスと特権意識か

　女子プロレスラーのジャガー横田さんの夫である医師の木下博勝氏が、かつての勤務先の「医療法人社団 颯心会」で暴言などのパワハラを繰り返していたと、「週刊文春デジタル」で報じられた。それに対して木下氏は「暴言や、まして暴行など、事実無根です」と真っ向から否定したが、被害を受けたと訴える准看護師の束原康寛さんがこんどは実名で告発した。

　さらに、パワハラの新音声が「週刊文春デジタル」で公開された。その中で、木下氏は束原さんに「障害者なんじゃないか、お前」「全く子供ちゅうかなー、お前の親が悪いな」などと暴言を吐いている。

　こうした経緯から、木下氏には次の3つの特徴があるように見受けられる。

1）強い特権意識

2）想像力の欠如

3）現状認識の甘さ

　まず、「俺を誰だと思っているんだ」が木下氏の決まり文句だそうだが、これは1)強い特権意識を反映している。おそらく「自分は特別な人間だから、少々のことは許される」と思い込んでいて、それが一連の暴言につながった可能性が高い。

　このような特権意識を支えていたのは、東京大学大学院医学系研究科博士課程を修了し、東京大学医学部附属病院第一外科にも勤務したことがあるという経歴だろう。ただ、木下氏は東大医学部を卒業したわけではなく、杏林大学医学部の出身である。もしかしたら、純血主義の伝統が色濃く残る東大病院でコンプレックスにさいなまれるような経験をして、そのコンプレックスを払拭するために「医者が一番偉い」と強調せずにはいられないのかもしれない。

　しかも、「俺を誰だと思っているんだ」と口にする割には、それに見合うだけの立派な仕事をしていたのか、疑問である。「外科医である俺は内科医よりも偉い」と話すこともあったらしいが、最近手術をしたことがあるのだろうか。また、医師としての責任感のなさや患者への冷たい態度のせいで、「木下先生には診察してもらいたくない」というクレームが頻繁に寄せられたようなので、医師としてのプロ意識に疑問を抱かざるを得ない。

　ただ、木下氏の特権意識を助長した一因に、颯心会と結んだ業務提携契約もあると私は思う。颯心会の管理職によれば、契約書には、医師としての業務だけでなく広告塔としての役割も担っていただくという文言も入っていて、給与も他の常勤医師の約2倍の額を払っていたという。こうした特別扱いが、木下氏の「俺は、他の医師とは違う特別な医師だ」という特権意識に拍車をかけた可能性は十分考えられる。

他人を傷つけることへの鈍感さ

　束原さんが実名での告発を決意した背景には、相当の覚悟があったはずだ。その根底には激しい怒りがあるように見えるが、それだけの怒りを買うことを木下氏は想像できなかったのだろう。この2）想像力の欠如のせいで、束原さんを障害者呼ばわりしたうえ、親まで侮辱したわけだが、一連の暴言がどれほど束原さんを傷つけたか、あまりわかっていなかったように見える。だからこそ、当初は謝罪せず、自らの言動はあくまでも“医療者としての教育”だったと主張したのだろうが、それが束原さんの怒りを一層かき立て、実名告発という事態を招くことになった。

　このように現状をきちんと認識できなかった3）現状認識の甘さが、木下氏をさらに窮地に追い込んだ。 “エリート医師”で、テレビにもよく出ている“有名人”である自分がパワハラを否定すれば、それを信じてもらえるはずで、時が経てば、ほとぼりが冷めるだろうと思ったのなら、甘すぎる。

　さすがに、このままイメージが悪化し続けると今後のタレント活動に支障をきたしかねないと危惧したのか、公開された音声について「私の発言で間違いありません」と認めたうえで、束原さんに対して「かけた言葉の中には、行き過ぎた表現もありました。一人の人間として反省しております」と謝罪した。もっとも、「事実と異なる点が多数あることについては申し添えておきます」とも述べており、どこまで真摯に反省しているのか、疑問だ。第一、遅きに失した感がある。

（文＝片田珠美／精神科医）