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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

間違いだらけのインフルエンザワクチン予防&対処法…検査陰性でも実際は感染多数

文=新見正則/医学博士、医師

 まず、インフルエンザ感染か否かを調べる簡易キットを使い、10分ぐらいを要する検査で診断をします。しかし、この検査はインフルエンザの感染初期では陽性が出ません。また、実際には感染していても6割ぐらいの陽性率と言う先生もいます。つまり、キット検査では陰性でも、インフルエンザ感染かもしれないのです。

 そして抗インフルエンザ薬は、感染後2日以内に投与しないと効果がないため、簡易キットで陰性と出ても、臨床的にインフルエンザ感染と医師が判断すれば抗インフルエンザ薬の投与を勧めるのです。そうであれば、インフルエンザの簡易キットの検査は不要ともいえます。

 一方で、インフルエンザに罹っても自分の免疫力でインフルエンザを退治できる人もいます。またインフルエンザワクチンのお陰でインフルエンザ感染が軽症化しますので、症状が激烈でなければ、自宅で静養するという極論君の発言が実は最良の選択肢ということもあり得ます。

 非常識君は西洋薬が嫌いなようです。確かに漢方の麻黄湯にインフルエンザ感染を防止したり、また症状を和らげる効果もありますが、漢方だけに頼ることは賢い選択肢とは思えません。頭痛や関節痛や高熱、鼻水などには西洋薬剤がやはり有効で切れ味が良いのです。そして抗インフルエンザ薬のような直接インフルエンザウイルスを撃退する作用は、漢方にはありません。

 つまり、いつもの風邪と変わらない症状であれば、極論君が言うように自宅で静養することもいいでしょう。そして、風邪であれインフルエンザウイルスであれ、感染の初期には非常識君が言うように麻黄湯も有効です。そして自分の免疫力でインフルエンザを撃退することも可能です。

 しかし、いつもの風邪とは違う症状であきらかに重篤と感じるときは、ぜひとも医師の診察を受けましょう。インフルエンザ感染を早期に終了させる抗インフルエンザ薬や、症状を緩和する薬剤はいろいろと揃っていますから。常識君の発言を基本として、非常識君や極論君の意見も参考にして、そしてなにより相談できる主治医を日頃から決めておきましょう。
(文=新見正則/医学博士、医師)

新見正則/医師、新見正則医院院長

新見正則/医師、新見正則医院院長

外科専門医 /消化器病専門医 /消化器外科専門医 /消化器内視鏡専門医
慶應義塾大学医学部卒業後、外科医として研鑽を積む。大学病院や関連病院で診療にあたるほか、英・オックスフォード大学にて博士課程を修了。
新見正則医院 公式サイト

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