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安保徹「間違いやすい医学の常識」

36℃以下の低体温は危ない!病気や疲れやすくなる、多忙や運動不足の恐ろしさ

文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士
36℃以下の低体温は危ない!病気や疲れやすくなる、多忙や運動不足の恐ろしさの画像1「Thinkstock」より

 東洋医学には「冷えは万病の元」という言葉があります。一方、現代医学は冷えに関して目を向けることがあまりありません。冬山での遭難による低体温症を問題にすることはあっても、日常的に体調不良を持っている人の体温には無関心なようです。この感覚が、現代医療があまり皆さんの期待に応えられない原因になっているのです。

 体温をつくるのは主に筋肉の働きです。しかし、筋肉の使いすぎは問題です。忙しさや悩みやスポーツのしすぎで疲労がたまるような生き方が続くと、交感神経が緊張状態になります。このようなとき、血管収縮が起こり、副腎皮質ホルモンが分泌され、低体温になります。外観では顔色が悪くなっています。からだは疲れています。

 普通の人は動物の感性を働かせて、忙しさから逃れたり、悩むことを減らしたり、スポーツのやりすぎをやめて身を守るのですが、まじめな人やがんばり屋の人は無理を続けてしまいます。そして、低体温を抱え込むことになります。ここから体調不良と病気が始まります。

 私たちのエネルギー生成部位であるミトコンドリアは、細胞内で食べ物から有酸素下にエネルギーをつくっています。このミトコンドリアの機能低下が低体温で起こってしまいます。ミトコンドリアが元気に働いてエネルギーや熱をつくりだすには、37℃以上の深部体温が必要です。

 このようにして、無理な生き方を続けた人が低体温になり、エネルギーや熱を十分につくり出せなくなり、病気が襲ってくるわけです。腋下温で36℃以上の体温が正常で、36℃以下になると低体温です。ふだんから平熱を測って知っておき、自分が低体温かどうかを知らなくてはなりません。低体温とわかったらすぐ原因も考えてみましょう。医療の現場では、せっかく体温を測っても、このような感覚が失われています。

不活発すぎる生き方もNG

 もうひとつ、無理と逆の不活発すぎる生き方も低体温をつくることを知っておきましょう。日本のように国が豊かになると、生活のすべてが便利になっていきます。そして、からだを動かす機会が減ってきます。子供なら外であまり遊ばない、お年寄りなら家の中でじっとしているという状況です。大人なら、車に頼りすぎて歩くことが少なくなります。

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

1947年、青森県生まれ。東北大学医学部卒業。現在、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授(国際感染医学講座免疫学・医動物学分野)。米国アラバマ大学 留学中の1980年に「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製。89年、胸腺外分化T細胞の存在を発見。96年、白血球の自律神経 支配のメカニズムを初めて解明。国際的な場で精力的に研究結果を発表し続け、免疫学の最前線で活躍
医学博士安保徹 公式サイト

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