カレーチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)のプラスチック破片が混入した可能性がある廃棄物の冷凍ビーフカツを横流しした産業廃棄物処理業者ダイコー、スーパーマーケットなどに卸した仲卸業者みのりフーズの本社がそれぞれ愛知県、岐阜県であるとのニュースを見て「またか」と思った。
三十数年前、愛知県を中心に廃棄されなければいけないはずの病死した牛の肉が、県内の学校給食に出回ったことがある。事が明るみに出たきっかけは、病死肉を運搬するトラックが交通事故を起こし、道路に病死肉が散乱したことによる。「なんだ、この肉は!」と大騒ぎになり、警察が調べたら学校給食用だとわかったのだ。
それから10年ほど前、狂牛病(BSE)が世界的に猛威を振るい、脳や眼、脊髄など牛の特定危険部位はすべて廃棄されることになった。ところが食肉処理場と取引のある岐阜県の廃棄物処理業者が、焼き肉店へ横流ししていたことが明るみに出たのだ。
いずれも黒幕に食品廃棄物を扱うあるブローカーの存在が取沙汰されたが、うやむやになった。
今回発覚した廃棄物横流しは、ココイチのカツだけでなく、コンビニエンスストアチェーン店や大手味噌メーカーの商品など、200点近くに及んでいる。かなり力のあるブローカーが動いていなければ、このようなことにはならないはずだ。
ともかく、とんでもない規模で“フードロンダリング”がまかり通っているのが食品業界の実態である。
廃棄物から激安食品が“リサイクル”されている
筆者が実際に目撃したのは、こんなケースである。
筆者が住んでいる市に人気のパン屋がある。朝早くから多くの従業員が調理場でさまざまなパンを焼いている。その調理場の裏口に、前日売れ残ったパンやハム、コロッケ、レタス、トマトなどを複数の透明のポリ袋に入れて、廃棄物として出しておく。毎朝9時前には産業廃棄物処理業者が引き取りにくるわけだが、偶然、その場面に遭遇した。
ちょうどダイコーの件が明るみに出たときだったので、注意深く、その廃棄物処理業者の動きを見ていた。そうすると、その場でポリ袋を開け、手早くまだ形が残っているものは、別の袋に詰めかえているのだ。コロッケパン、焼きそばパンなど、見た目にもまだ食べられそうである。思わず「これらをどうするんですか」と廃棄物処理業者に聞くと、「いいよ、少し持っていきな」とパンを渡された。どうやら筆者はホームレスなどと間違えられたようだ。