リサイクル業を行っている知り合いにこのことを話すと、こともなげに「ブローカーが引き取りに来て、路上販売業者に流すことは珍しくない」と言った。場外馬券場周辺の路上などで販売されている安いコロッケパンやサンドイッチは、このような廃棄物から流れてきたものが多いという。
「ゴミは宝の山」という言葉があるが、文字通り産業廃棄物を利用して大儲けしている業者があるのだ。
一昨年、農業機器などの産業機械メーカー・九州クボタの社員が廃棄物処理法違反に問われた事件があった。この社員は、精米機から出る産業廃棄物の玄米を集め売却していた。玄米には米が少し残っているので、それらを集めて再度精米して酒造メーカーに売る廃棄物処理業者がある。九州クボタの社員は、九州各地に配置されている自社の自動精米機器から出る玄米を集め、小遣い稼ぎに数年間にわたって売却していたという。精米後の玄米は産業廃棄物扱いされるため、認可を受けている業者でなければ処理することはできない。
では、このような産業廃棄物から出た米から、何がつくられているのか。それはコンビニやスーパーで販売されている、1パック100円の日本酒や安い焼酎だ。このような酒は、成分表示にも単に「米」としか記載されていないので、消費者にはその素性まで知る術はない。安い日本酒や焼酎が急に増えたのは、ゴミに出された米など、安く原材料を仕入れられるようになったからだ。ちなみに、米だけでなく、麦でも同様の流通が行われている。
そんなことは少しも知らずに、消費者は安いことを歓迎している。しかし、そんなゴミのような原料から良い酒ができるはずはなく、製造工程で醸造用添加物が必ず使用されている。このようにして製造された酒が体に良いわけはない。体に悪く、ただ同然で手に入れた原材料でつくった酒は100円でも高すぎる。
(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)