日本には、約30万種類の苗字が存在するといわれている。これは、アメリカの150万種、イタリアの35万種に続く、世界3位の数字。実は、日本は世界でも有数の苗字大国なのだ。
そんな日本の苗字の中でも、ポピュラーなのが「佐藤」と「鈴木」だろう。いずれも、180万~200万世帯と驚異的な数を誇っている。
一方、世帯数が圧倒的に少ない苗字が存在していることをご存じだろうか。中には、残り1世帯となった「絶滅寸前の苗字」もあるという。消滅しつつある希少な苗字について、家系図の作成代行を全国から請け負っている苗字の専門家で、家系図作成代行センターを運営する渡辺宗貴氏に聞いた。
残り1軒!「文殊四郎」「春潮楼」という超希少苗字
「世帯数が1軒という苗字は、いくつか確認されています。例えば『文殊四郎(もんじゅしろう)』という苗字は、2009年と12年の電話帳で確認したところ、世帯数はわずか1軒です。この人は、福井県にいらっしゃるようです。また、『春潮楼(しゅんちょうろう)』さんも、北海道に1軒だけ存在することが確認されています」(渡辺氏)
「文殊四郎」さんはフルネームのように見えるが、これでひとつの苗字だという。「春潮楼」さんに至っては“名前っぽさ”がまったく感じられず、「日常生活で、さぞ困るのでは……」と、勝手ながら想像してしまう。ほかに、絶滅寸前の苗字にはどんなものがあるのだろうか。
「『四十九院(つるしいん)』さんは、やはり09年と12年の電話帳を見ると、9軒しか登録がありません。この苗字のルーツは宮城県といわれ、四十九院さんたちは、その近辺に住んでいらっしゃるようです。また、『人首(ひとかべ)』さんは09年の時点で20軒の登録がありましたが、12年になると14軒に減少しています」(同)
絶滅寸前の苗字はまだまだある?
途絶えつつある、希少な苗字。仮に継承者がいなくなった場合、その苗字はどうなってしまうのだろうか。
「残念ながら、どうすることもできません。過去の電話帳や人名録、職員録などに記録として残るだけです。ただ、国勢調査票や戸籍簿など、日本人全員の苗字を確認できる資料が公開されていないため、実際のところ、希少な苗字が消滅したかどうかを判断するのは難しいのです」(同)