NPO法人日本アトピー協会通信誌「あとぴぃなう」によれば、日本には600万人以上のアトピー患者がいるという。割合でいうと、日本国民全体の20人に1人が発症していることになる。
株式会社untickle(アンティクル)代表の野村千代さん(29歳)は、2013年にアトピー患者のためのSNS「untickle」を設立した若手起業家。自らがアトピーを抱えている患者でもある。
untickleには、アトピーに効果があった対策法や、料理のレシピなどが全国から投稿されている。投稿欄が体の部位ごとで分かれているため、自分の症状にあった情報を見つけやすいのが特徴だ。また、野村さんが編集長となって有志の当事者仲間が取材・執筆を行い、整理されたアトピー情報を届ける「untickleコラム」の運営も行っている。
適切な対策法を見つけるためにuntickleを立ち上げ
野村さんは1986年、日本人の父と韓国人の母のもと、ソウルに生まれた。日本で法政大学を卒業後、2012年に独立して韓国に渡り、個人事業主として日韓のローカライズコンサルを行うように。しかし26歳の時、持病のアトピーが悪化したため、日本に帰国して療養生活を送り始めた。
「これを機に、しっかりアトピーについて学ぼうと、本やインターネットで調べ始めました。でも情報がありすぎて、自分の症状に合う対策法を見つけられなくって。いくら情報量が多くても、自分の症状や性格、生活環境などに合った情報でなければ症状は改善できないと気づいたのです」
ほかのアトピー患者のためにも、情報を整理してパーソナライズする必要がある。そんな思いからuntickleを立ち上げ、クラウドファンディングやOpen Network Lab(現デジタルガレージ)からの出資を受け、サービスの基盤をつくってきた。
重度の患者のために、雇用の創出もしていきたい
現在、コラムの読者やSNSの会員を含めると、約7000人がuntickleを利用している。治療法やコラム以外には、野村さんが実際に食品や湯治施設を体験して、アトピー患者のためになると思った企業を「公認企業」として紹介している。
「今後は公認企業を通じて、アトピー患者にとって安心できるサービス店舗や商品を集約して整理し、さらには公認企業と患者を結び付け、雇用創出につながる取り組みもしていきたいですね」
野村さんがそう話す背景には、アトピーに対する認知が低い日本の現状がある。アトピーは初期症状として肌がカサカサし始め、掻くことで脳からドーパミンという快感物質が出てくる。そのため掻くことに快感を覚え、止まらなくなってしまう。