掻き壊しがひどくなると、痛みによって体を動かすことすらが辛くなる。また水道水の塩分が肌に染みるため、入浴も困難に。重度になると全身の皮膚がケロイドのようになり、寝たきりになってしまうこともある。社会生活が送れず、休職せざるを得なくなり、そのまま退職に追い込まれた人もいるようだ。
「『アトピーってかゆい症状でしょ?』と思われがちですが、本当は辛い病気なんです」
実際に野村さんも、2015年はアトピーが悪化したため、半年間休養していたという。2016年1月から活動を再開したものの、週に3日働いて4日は家で休むという生活を送っている。
「将来的には同じ境遇の方たちが、公認企業で働きながら、アトピーも改善させる仕組みをつくりたいなと。住むところも提供しようと考えています。先日、認定企業の『遠赤青汁株式会社』がある愛媛まで行ってきました。そこでは約1年後の実現に向けて、重度のアトピー患者の働き口を設ける計画を立てています」
今後は国を越えて、たとえば韓国のアトピー患者が来日して就職し、治療をしながら働いてもらう構想もある。「お金が稼げて日本語の勉強にもなるので、次のステップにもつながりますよね」と野村さんは笑顔を見せる。
完治がないからこそ情報を発信し続ける
収益は企業からの広告費が中心で、少しずつ伸びているという。集客方法は、SNSの記事やコラムからの検索流入に加え、Facebookの有料広告を活用している。
また、untickleの会員は当事者だけでなく、アトピーのお子さんを持つ母親も多いことから、ママ向けのフェスタを開催している団体や企業との連携や、さらにはuntickle独自でも認定企業の商品を扱ったフェスタの開催といったオフライン活動も今年は計画している。
「アトピーで悩むのは当事者だけではなく、そのママや恋人など近い人も、どう接してどうケアすれば良いのかわからないことが多い。今年はそういった方々の役にも立てるようオンラインとオフラインを組み合わせて取り組んでいく予定です」
このように、アトピーで苦しむ人が、少しでも楽に生きていけるようにと願いながら活動を続けてきた野村さん。体調を崩しながらも会員の思いに応えるべく、ほぼ一人でuntickleを運営している。
そんな努力が認められ、野村さんのもとに今年、吉報が飛び込んできた。米経済誌「Forbes」が行う、各国で活躍する30歳未満の人を選出する「30アンダー30」で、アジア地域の300人の一人に選出されたのだ。ほかに選出された日本人25名の中には、メジャーリーガーの田中将大選手や、テニスプレーヤーの錦織圭選手など錚々たる顔ぶれが並ぶ。