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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

新型コロナ、血清アルブミンを増やす「肉食」がおすすめ…予防には、たんぱく質栄養を

文=熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事
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「photo AC」より

 肉食が血清アルブミンを増やしシニア世代の老化を遅らせることがわかった(本連載28、29参照)。年初から世界中を震撼させ社会経済に大打撃を与えている新型コロナウイルス感染症はかなり手ごわい。今こそ、肉食の効能をみんなで享受するときかもしれない。

 感染症の専門家からは、予防免疫の開発と治癒寛解のための治療法が確立するまではリスク最小化のため自ら感染機会を減らすよう努力するしかないと真摯な発信がなされている。信頼できる研究成果の集積はこれからのため、不正確な情報を慎む態度が専門家には何より求められる。

 しかし、これまでの健康・栄養科学の研究で確立されたベーシックな知見の中には、この感染症の予防や重症化リスクを低減する手段に応用できるものがある。その一つが、からだの栄養状態と感染症リスクに関する知見である。感染症の多くは栄養状態の悪い国・地域で発生し蔓延することは歴史が教えてくれている。

 日本は長く結核に悩まされ、今もその最中である。戦前の結核は慢性的なたんぱく質栄養の悪さからくる免疫防御能の低くさが原因だ。1900年頃の日本の平均寿命は約40歳、45年たった1945年でも約50歳である。栄養状態が劣悪で感染症に弱い時代は寿命が延びない。超高齢社会の今の日本の結核は、老化による栄養状態の低下に気づかないシニアの間での感染の広がりだ。人類は感染症や栄養失調と今も戦い続けている。

 さて話を戻そう、新型コロナウイルス感染症はウイルスに感染しても80%はかぜのような軽症で寛解するようである。問題は残り20%の重症化するグループである。高齢者や持病を持っている者がこのハイリスクグループに属するとされる。このハイリスクグループは体内に老化や病気に起因する慢性炎症があるため、たんぱく質栄養をはじめトータルに栄養レベルが低い状態になりやすい。自ずと免疫防御能も回復力も低下する。

 実は栄養指標である血清アルブミンは、からだの炎症レベルや免疫防御能と密接に関係している。血清アルブミンはからだに炎症があると低くなる。例えば喫煙習慣がわかりやすい。喫煙者はハイリスクグループといえる。喫煙は体内で炎症をつくり出し慢性化させる。炎症の有無と程度を表す血液中の指標である「Cリアクティブプロテイン(CRP)」を喫煙者と非喫煙者で比較すると、明らかに喫煙者のほうが高い。逆に血清アルブミンは喫煙者ほうが低い。喫煙者は禁煙することでCRPが減り血清アルブミンが増え栄養状態が改善することは既知だ。

 つい最近、新型コロナウイルス感染症と喫煙の関係が報じられた。感染者のなかでも喫煙者ほど重症化しやすいようだ(Wei Liu, et al. Analysis of factors associated with disease outcomes in hospitalized patients with 2019 novel coronavirus disease. Chinese Medical Journal, 2020 など)。当然と言えばそれまでだが、喫煙者では消炎のため血清アルブミンが消費され、免疫防御能も回復力も衰えていると推定できる。

血清アルブミン、感染症の予防に有効

 多くの先行研究は、血清アルブミンの高いことが感染症の予防に有効なことを示している。血清アルブミンは感染症に対する防御レベルと万が一感染した際の重症化リスクも予測する指標でもある。感染症予防と重症化予防の叫ばれる今こそ、血清アルブミンを増やす方法に注目すべきだ。ここに示した図は、前回紹介した地域ぐるみの4年間の肉食推進運動で表出した元気シニア628名の血清アルブミンの変化を喫煙者と非喫煙者に分けてみたものである。

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喫煙習慣の有無別にみた肉食推進運動による血清アルブミン(g/dL)の変化

*両群ともに血清アルブミンが有意に増加している。群間の交互作用は認められない。

 分析責任:熊谷修

「東京都老人総合研究所;特別プロジェクト研究,中年からの老化予防総合的長期追跡研究」より 引用転載には許可が必要です。

 やはり、肉食推進運動開始前の1996年時点では、血清アルブミンは喫煙群のほうが明らかに低い。この差は活動開始後の4年後の2000年でも消えることはないが、両群ともに血清アルブミンは増加している。喫煙者はハンディーをしっかり認識すべきだが、肉食のもつ血清アルブミンを増やす効果は享受できる。血管内壁に炎症が起きやすい高血圧の方でも同様である。肉食は血清アルブミンを増やし老化を遅らせるだけではなく、感染症流行時の免疫防御能を高めるのに寄与貢献するかもしれない。

 新型コロナウイルスの惨禍は収束の気配がいまだない。からだの栄養状態を高める手段の重要性を再認識するときである。小欄はシニアの感染症予防のための食生活の手立てとして肉食を薦めようと思う。炎症リスクの高い高血圧症や喫煙習慣のある方には特に強調したい。

(文=熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事)

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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