不妊の原因は、約半数が男性由来である――ということは不妊治療へ足を踏み入れた夫婦が知る常識だ。男性はそもそも自分が不妊であることを想像しない。また、「自分が不妊の原因だったらこの世の終わり」と1か0かで物事を考えやすく、いざ自分が不妊である可能性が出ても、なかなか受診しない。
しかし、実際には男性も生活習慣次第で精子の量・質ともに改善できるという。さらに、自宅でも確認する方法が、いくつかあると聞く。産経新聞社は2月、「夫婦で妊活セミナー~不妊治療は男性の覚悟と行動で決まる~」というセミナーを開催。男性不妊の専門家である辻村晃医師(順天堂大学教授)が登壇した。そこでわかった「自宅でもわかる妊娠力簡単チェック方法」をいくつかお伝えしたい。
男性の妊娠力が変わる3大要素
辻村医師はさまざまなデータを分析して「男性不妊の3大要素」を導き出した。それによると、(1)加齢、(2)勃起力、(3)男性ホルモンの量が関係するという。加齢は致し方ないとして、一番われわれの目にわかりやすいのは(2)だろう。
だが、男性は同性同士で膨張時の大きさを比較することはできない。せいぜい彼女や妻に質問をすることでしか確認できないが、正直な答えを返す女性はそういないので、答えはアテにならない。そこで登場したのが、硬さを4段階で評価する「(EHS: Erection Hardness Score)」だ。
・グレード1:こんにゃく並み。挿入は厳しい
・グレード2 みかん並み。挿入は難しい
・グレード3 グレープフルーツ並み。挿入はできるが、完全ではない
・グレード4 りんご並み。完全に硬い
筆者はサンプルとなるゴム状の棒を触ってきたが、グレード4(りんご並み)は「こんな人類はいるか」と思うくらいの硬さだった。おそらく、自分は硬いと思っている男性でも、グレード3くらいではないだろうか。もし生殖機能に関して悩みがあれば、男性不妊治療に強い泌尿器科などで相談してみよう。
蛇足だが、辻村医師によると大きさは一切関係ないとのことだ。
妊娠力は変わる
3大要素には入っていないが、男性不妊外来では触診で「タマの大きさ」を確認するという。実はそのサイズも妊娠力に関係し、大きく硬いほうが精子の数・運動能力も高いという。
客観的に自分のサイズを測るには、計測器を使用する方法もある。
こちらの計測器は、オーキドメーターという。うずらの卵より少し大きいくらいなら、妊娠力に問題なしとされるようだ。
さらに自宅で調べたいなら検査キットを使おう
さらに自宅で調べてみたい方には、スマホでチェックできるキットがある。リクルートが出している「Seem(シーム)」は、自分の出した精子をスマホで閲覧でき、それだけでなく運動率と量を測定できる。
実際には奇形率や直進率(精子の中には頭が2つあるなど奇形で受精に適さないものや、まっすぐ進めないので卵子にたどり着かないものがある)なども調べなければ最終確定できないため、最後は泌尿器科や婦人科で検査することになる。
自宅検査キットは「自分の妊娠力をチェックできる」のが大きなメリットだろう。そこで自分の妊娠力に課題がありそうならば、改めて受診するチャンスにもなる。冒頭で書いたとおり、男性不妊も治療や生活習慣次第で改善できる事例が多い。たとえスマホに1つも精子が写らなかったとしても、治療により子供に恵まれるケースもある。
加齢が妊娠力に影響する以上、行動は早いほうがいい。まずは手始めに自宅でチェックしては、いかがだろうか。
(文=トイアンナ/ライター)