夫婦のうち、6組に1組は不妊に悩む時代。日本は不妊治療の患者数が世界1位だが、それでも不妊治療の実態はあまり知られていない。
恥ずかしながら筆者も、不妊に関しては「お金がすさまじくかかる」「日本人はダイエットをしすぎるため女性が不妊になりやすい」くらいしか知らなかった。ましてや不妊治療といえば、顕微鏡を使ってブスっと精子を卵子に注入するシーンくらいしか見たことがなかった。しかしこの数週間で、衝撃の事実を知った。なんと、不妊原因の48%が男性由来なのだという。
そこで今回、男性の不妊治療に詳しい株式会社ヘルスアンドライツ代表取締役の吉川雄司氏から詳しくお話を聞いた。
男性が抱える3つの不妊リスク
――男性由来の不妊とは、具体的にどういう種類があるのでしょうか。
吉川氏 大きく分けて3つありますが、どれも精子に関するものです。
(1)精子が少ない
(2)精子の運動率が低い
(3)正常形態の精子が少ない
これ以外に、そもそも精神面での課題があって妊娠するための行為ができないケースもありますが、行為があるにもかかわらずお子さんができない場合は、おおまかに分けてこの3パターンとなります。
――どれも検査をしないと、わからないものですよね。
吉川氏 そうですね。男性は検査を受けるのを嫌がるので、まず女性がひとりで産婦人科へ通い、「タイミング法」という妊娠しやすい時期を測定する検診を受けます。それでも進展がなくなってから、男性はやっと検査を受け、そこで初めて男性由来の不妊だと発覚するケースも多いです。
――男性はなぜ検査を避けるのでしょうか。
吉川氏 まず危機感の薄さがあると思います。女性は生理によって毎月、自分が妊娠しているかどうか知らされます。不妊治療においても、薬の投与にともなう副作用など、「不妊」へ危機感を抱く機会が多い。それに対して男性は、精子を提供するだけの立場ですから、いまいち不妊治療への実感がわきにくいのです。
さらに不妊治療について調べても、ふわっとした情報が多いのも挫折要因です。エモーショナルな表現が散りばめられていると、男性は「もっと数字に基づいたデータを欲しい」と思いがち。そこで調べる気を失くし、妻から叱られて、さらに遠のいて、というケースが見られます。
――男性が動かないことによる損失も大きそうですね。
吉川氏 そうです。何よりも経済的損失へ目を向けてほしいですね。前述のタイミング法は、1カ月につき約1~3万円かかります。タイミング法で失敗してから体外受精など次の治療へ進む夫婦も多いのですが、そこで「タイミングの問題だと思ったら、実は夫の精子が問題だった」ということが判明することもあります。タイミング法を6カ月実践すると3万円×6カ月=18万円になるので、その金額を丸々ドブに捨てていたことになります。