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「粉ミルクは作り置きで冷蔵庫で24時間保存OK」に警鐘…食中毒の危険も

文=あかいあおい/A4studio
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「gettyimages」より

 乳児の子育て期間に重宝することもある粉ミルク。その作り置きについてネットで情報が錯綜しているのをご存じだろうか。なかには“作り置きで24時間保存OK”という意見もあるのだが、エビデンスが不確かで信憑性を疑う声も多い。そこで今回は一般社団法人 母子栄養協会で離乳食・幼児食アドバイザー代表講師を務める川口由美子氏に取材した。

24時間の作り置きは、一般家庭では非現実的?

 まず、育児用粉ミルクの作り置きは可能なのか、可能な場合はどのような方法であれば問題ないのか。

「初めての子育てだと知らないことが多いうえに、どの情報が正しいのかがわからなくて不安ですよね。赤ちゃんに関わる大切な話なので、丁寧にご説明します。

 まずは基本中の基本ですが、育児用粉ミルクは作り置きせず、飲ませる直前に作ったほうがいいです。ですが、赤ちゃんがぐずってしまったり眠ってしまったり、飲ませようと思って作ったのに飲まなかったというシチュエーションはあるかと思います。このようなとき、赤ちゃんが哺乳瓶に口を付けていなければ、常温で2時間程度保管することは可能です。

 大事なことですから繰り返しますが、このとき注意してほしいのは赤ちゃんが哺乳瓶に口を付けているかどうか。唾液から菌が入って繁殖しやすいので、口をつけたものは、すぐに飲み切ってください。

 また、これらの時間はあくまでも目安で、気温や湿度などによって変動します。特に直射日光が当たる場所や湿気の多い場所は菌が繁殖しやすいので、このような場所では基本的に保管せず、残ってしまった場合は捨てるのが賢明でしょう」(川口氏)

 ではネットで話題となっている“作り置きで24時間保存OK”は間違った情報ということなのだろうか。

「はい、間違った情報だと認識して概ね問題ないと思います。とても危険ですね。少々複雑ですが、厳密に言うと、保冷スピードが速く庫内が清潔に保たれている冷蔵庫であれば、24時間保管は可能ではあります。しかし理論上は可能ですが、一般家庭では現実的に考えて非常に難しい方法なのです。

 というのも粉ミルクは温かい状態でできあがることがほとんどだと思うのですが、温かいまま冷蔵庫に入れてしまうと庫内の温度が下がりにくくなってしまい、下がりきる過程で細菌が増えてしまうことも考えられます。そのため24時間保管する場合は、粉ミルクを作ってから1時間以内に5℃以下の場所で保管することが絶対条件といわれています」(同)

 この条件だけを見ると、急速冷蔵ができる冷蔵庫がある家庭なら24時間保管も可能な気がするが。

「いえ、急速冷蔵だけでなく、庫内や哺乳瓶が清潔に保たれているかどうかも大きなポイントなのです。いくら庫内をきれいにしているつもりでも、他の食材が入っていると、そこから菌が移る可能性があるためNGとなってしまいます。また哺乳瓶が綺麗であるかも大切です。

 ですので、ミルク専用の保冷スピードが速い冷蔵庫を用意できるならば24時間の保管も可能ですが、そういったご家庭はほとんどないと思いますので、一般家庭で24時間保管するというのは現実的でないといえるでしょう。

 さらにこの後お話するサカザキ菌という細菌が発症した事例は、家庭用冷蔵庫での保管が原因とされています。このような事例もあるので、家庭用冷蔵庫での保管は絶対にやめてください。それに冷蔵庫で保管したものを赤ちゃんにあげる場合は温める手間もかかるので、お母さんの負担も増えてしまうのではないかと思います」(同)

粉ミルクの作り方、お湯の温度は70℃以上の理由

 ここで改めて育児用粉ミルクの作り方や注意点を確認しよう。

「まずは消毒済みの乾いた哺乳瓶にミルクの粉を入れます。このときNGなのが、ご自身の指や清潔でないおそれがあるスプーンなどで、育児用粉ミルクをすり切ることです。これは菌が混入するリスクを伴うので絶対にやめてください。そして付属のスプーンですり切りながら正確に計ることも重要です。

 次にお湯を注いでいきます。お湯は一度沸騰させて、それから70℃以上に調整したものを入れます。哺乳瓶の半分くらいまでお湯を注いだら、蓋をして哺乳瓶をよく振って粉を溶かします。70℃以上のお湯を使用する理由ですが、これはサカザキ菌などの汚染リスクを低減するためです。

 サカザキ菌とは自然界での生息場所はよくわかっていませんが、まれにヒトの腸管内で検出される細菌のこと。成人が感染した場合の症状は軽いのですが、乳児や未熟児の場合は敗血症や壊死性腸炎を引き起こすことがあり、重篤な場合には髄膜炎を併発することがある危険な細菌です。サカザキ菌の他にも様々な細菌が粉ミルクを開封した後などに混入する性恐れがあるので、溶かす温度は70℃以上で徹底してください。

 最後に湯ざまし用のきれいな水を適量入れて、もう一度軽く混ぜます。そして流水などにさらしてミルクを人肌くらいの温度まで調整すれば完成です」(同)

育児用粉ミルクは母乳の代替品

 川口氏は、育児用粉ミルクの作り置きの利便性について語られること自体に警鐘を鳴らす。

「あくまで育児用粉ミルクは母乳の代替品です。さまざまな理由で母乳が出ない方や、母乳に制限があるような薬を服用している方が必要に応じて使う商品です。しかし調乳に手間がかかることから、使用されている方のなかには、“外出先でも気軽に持っていける”“人に預けるときに便利”と考えている方がいらっしゃるようですが、育児用粉ミルクの作り置きをそのように推奨することはできません。どうしても育児用粉ミルクの保管をしなければならないようなシーンでも、2時間経ったものは捨ててください」(同)

 育児用ミルクの保管は温度や清潔さに充分配慮し2時間以内に飲む必要があるようだ。

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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