粉ミルクに遺伝子組み換え原料が氾濫…メディアが報じない乳業メーカーの闇
日本が“超高齢化”という深刻な大問題を抱えていることを知らない日本人は、おそらくいないでしょう。このままいくと、超高齢化とともに人口が急減し、2014年に6587万人であった労働人口が、2030年には5683万人、そして2060年には3795万人へと加速度的に減少していくこともわかっています。総人口に占める労働人口の割合は、2014年に約52%だったのが、2060年には約44%に低下し、いよいよ働く人よりも支えられる人が多くなるという恐るべき時代に突入するのです。
それに伴って、マーケットとしての価値が下がるため、投資先として選択される機会も圧倒的に少なくなります。経済の成長力は低下し、労働力が不足することから長時間労働が常態化し、ワークライフバランスもさらに悪くなり、それが少子化に拍車をかけるという、最悪のスパイラルに入るだろうと予想する経済学者も多くいます。
若手の大臣が育児休暇をとるか、とらないかで一悶着ありましたが、実際にはそれどころの話ではなく、もっと根本的なところに深刻な問題が厳然と存在しています。育休をとることが悪いと言いたいわけではありません。それは問題の核心ではない、ということを言いたいのです。
2018年の日本国内での出生者数は91万8397人です。これは、統計がある1899年以降でもっとも少なく、これまで最少だった前年を2万7668人も下回っています。そしてこれはまだ推計値ではありますが、2019年の出生者数は、なんと約86万4000人。とうとう90万人を割り込む見通しであることが、厚生労働省の人口動態統計でわかりました。2016年に初めて100万人を割り込んでから、雪崩を打ったように出生者数は減り続け、出生者数から死亡者数を引いた自然減も44万4085人と、過去最大の減少幅を更新しています。少子化と人口減少が我々の生活に、本格的に深刻な打撃を与える日は、そう遠くはないことが実感されます。
粉ミルクに遺伝子組み換え原料
そんななか、大切な赤ちゃん用の粉ミルクに、遺伝子組み換え原料が使われていることがわかりました。筆者はそれを元農林水産大臣の山田正彦氏のブログで知ったのですが、驚きを通り越してあきれてしまい、徐々に怒りを感じました。大手企業の製品には軒並み、遺伝子組み換え原料が使われています。
筆者には3歳半になる孫がいますが、幸いなことに母親の母乳がよく出たので、ほとんど粉ミルクのお世話にならずに成長してくれました。言うまでもないことですが、赤ちゃんの成長にもっとも適しているのは母乳です。しかし、その母乳が思うように出ないお母様もいらっしゃいます。その場合は粉ミルクに頼ることになるわけですが、その粉ミルクに遺伝子組み換え原料が使われているとしたら、お母様たちはショックを受けるのではないかと心配しています。
筆者が生まれたのは昭和27年(1952年)ですが、その3年後、筆者の妹が生まれた昭和30年(1955年)に森永ヒ素ミルク事件が起きました。筆者も妹も、東京で生まれ育ったので、西日本を中心に起きた同事件の被害に遭わず難を逃れましたが、筆者は長じてからこの事件のことを知り、一歩間違えば妹も猛毒のヒ素が混入した粉ミルクを飲んでいたかもしれないと思い、沸々と怒りがわいてきたのを鮮明に覚えています。
その事件と比較することなどできませんが、今回の遺伝子組み換え原料入りの粉ミルクにも同様の怒りを禁じ得ません。とはいえ、メーカー各社は法律で禁じられていることをしているわけではないので、「なぜ赤ちゃんが飲むものに、そのような原材料をあえて使うのか」と問い詰めることさえもできません。非常にもどかしいところですが、要は遺伝子組み換え原料が使われている粉ミルクを自分の子供には飲ませたくないと考える方が、購入しなければよいわけです。
筆者は、遺伝子組み換え原料を使用しているとして名前が挙がっている乳業メーカーの製品は、赤ちゃん用の粉ミルクに限らず絶対に購入しないと、固く心に決めました。自分で選択ができない赤ちゃんに代わって、大人たちはもっと怒るべきではないでしょうか。
遺伝子組み換え食品に関しての賛否はあって構わないと、筆者は思っています。この問題は、そう簡単に解決できるものではありません。さまざまな利権が複雑に絡んでいて、とても一筋縄ではいきません。だからこそ消費者は、明確な態度で自分の意思を表明すべきです。遺伝子組み換え食品に疑問を持ち、少なくとも現時点では賛成できかねるという人や、とにかく自分は遺伝子組み換え食品を食べたくないし家族にも食べさせたくないと考えている人は、買わないという選択をして、自分の意思を表明する以外に手はありません。メーカー側や販売側は、望んでいる利益が得られないことがわかれば、製造販売はしなくなります。
一人ひとりの消費者の選択は、集まれば大きな力になります。メディアはこのことをまったくといっていいほど報じていませんが、一人でも多くの方に伝え、賛同してくださる方の力を結集させたいと思います。製品を買わないという選択は、消費者の責任であり、義務であり、権利であると筆者は考えます。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)