妊娠中は、胎児のためにも母体のためにも、いつにも増して栄養のバランスの取れた食事を心がけなければいけません。
体内で合成できないため食べ物から摂取しなければいけない必須栄養素は、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸などに加え、2種類の脂肪酸「リノール酸とオメガ3脂肪酸(アルファリノレン酸、DHA、EPA)」も過不足なく摂取しなければなりません。
厚生労働省が発表した『日本人の食事摂取基準(2015年版)』によると、妊婦の1日当たりのリノール酸の摂取目安は9gで、オメガ3脂肪酸は1.8g以上とされています。
リノール酸はいろいろな食物に含まれていますので、不足することはまずありません。むしろ過剰摂取に気をつけなければなりません。一方、オメガ3脂肪酸は食物に含まれていてもごく微量なので、不足しがちです。そこで、アルファリノレン酸を50~60%含有しているエゴマ油やアマニ油、そしてDHAやEPAが豊富な魚類を意識して摂る必要があります。エゴマ油やアマニ油は小さじ1杯(4g)で約2gのアルファリノレン酸を摂れますが、妊婦に必要なオメガ3脂肪酸のうち1gは魚に含まれるDHA、EPAで摂ることも推奨されていますので、魚食が必要です。
DHAは頭のよい子に不可欠
DHAは胎児の脳の発達に不可欠で重要な脂肪酸ですので、特に意識して魚を食べるべきです。妊婦が食べたDHAは母体から胎盤を通じて胎児に届けられます。20週頃から脳に蓄積され始め、出生後も母乳から引き続き摂取することでいわゆる「頭の良い子」に育ちます。生後 4 週時に脳内のDHA量が多いと、5~6 歳時の脳の発達レベルも高い「頭のよい子」に成長することが報告されています(「頭のよい子とDHA」参照)。
【DHA、EPAを1g摂取するための魚の種類と重さの目安】
・イワシめざし3尾 35g
・サンマ塩焼き半身 60g
・サバ塩焼き一切れ 80g
・サバ味噌煮缶 50g(200g入り缶詰の4分の1)
・アジの開き(中サイズ) 70g
そのほか、ブリ、カツオ、ウナギ、イクラなども含有量が多い。
例外的に避けるべき魚
魚は妊娠中の食事に欠かせませんが、魚類のなかにはDHAなどの有益な栄養素が含まれる一方で水銀などの有害物質も含まれていることから、例外的に避けたほうがよい魚があります。水銀の蓄積は胎児の成長に悪影響を与えます。厚生労働省もサイト上にパンフレットを載せて注意を促しています(『これからママになるあなたへ —お魚について知ってほしいこと』参照)。