今年の夏も猛暑、酷暑となることが予想されています。気温上昇に比例して、冷たいアイスクリームの売り上げも例年以上になりそうです。しかし、一般的に「アイスクリーム」と呼ぶ商品のなかには、避けるべき「隠れ油」を大量に使った商品があるので要注意です。
アイスクリームの2015年の販売金額は4647億円で、右肩上がりに伸び続けており、10年ほど前からは冬も暖かい部屋で食べるスタイルが定着し、いまや通年で消費されています。なかでも、「エッセルスーパーカップ」は一番の売れ筋商品で、コンビニエンスストアやスーパーマーケットの冷凍庫には大量に置かれています。
実は、このスーパーカップは、正確にはアイスクリームではありません。アイスクリーム類は次の3種に分けられます。
・アイスクリーム(乳固形分15.0%以上、うち乳脂肪分8.0%以上)
商品名:「ハーゲンダッツ」(ハーゲンダッツジャパン)、「パルム」(森永乳業)、ピノ(同)、ビスケットサンド(森永製菓)など
・アイスミルク(乳固形分10.0%以上、うち乳脂肪分3.0%以上) ※植物油脂が使われることもあります。
商品名:「チョコモナカジャンボ」(森永製菓)、「雪見だいふく」(ロッテ)、「ホームランバー」(メイトー)、「ジャイアントコーン」(江崎グリコ)など
・ラクトアイス(乳固形分3.0%以上) ※乳固形分はさらに少なく、乳脂肪分の代わりに植物油脂が使われます。
商品名:「エッセルスーパーカップ」(明治)、「爽」(ロッテ)、「パピコ」(江崎グリコ)、 「ブラック(チョコレートアイスバー)」(赤城乳業) など
乳固形分とは、牛乳から水分を除いたもので、たんぱく質、炭水化物、カルシウム、ビタミンなどです。さらに、乳脂肪分は牛乳から水分と乳固形分を除いたものです。ちなみに、牛乳100g中に3.8g程度しか含まれておらず、これを集めてつくるバターが高価なのがわかります。
アイスクリームは、この乳脂肪分が多いほど牛乳本来のコクのある味になりますが、その分、値段が高くなります。また、値段を抑えた場合は容量が少なくなります。
そこで生まれたのが、低価格で大容量のラクトアイスです。しかし、安いだけでは売れませんので、高価な乳脂肪分の代わりに安価な植物油や食品添加物を使うことで、アイスクリームに近い味を開発したのです。ラクトアイスが人気を得ているのは、「味、低価格、容量の多さ」という3拍子が揃っていからです。
発がん性や糖尿病の発症リスクがあるパーム油
原材料費を抑えるために使われている植物油がどのようなものであるか、スーパーカップのメーカーである明治に問い合わせてみたところ、使われている植物油は主にパーム油で、200ml中13%(26ml)を占めているとのことです。
パーム油は植物性ですが、組成が動物性のものに近く、そのため乳脂肪分の代わりになるのです。パーム油の使用は、安くておいしいものを提供して利益を上げる“企業努力”といえます。しかし、問題は乳脂肪分の代わりに使われるパーム油の安全性です。パーム油の安全性は確立されていません。
パーム油は世界中で規制が進んでいるトランス脂肪酸をほとんど含まないため、トランス脂肪酸の安全な代替油として大量に消費されています。しかし、大腸がんなどの発がん性や糖尿病の発症、動物実験での寿命短縮作用なども報告され、農水省のHPには「米国農務省(USDA)は、食品事業者にとってパーム油はトランス脂肪酸の健康的な代替油脂にはならないとする研究報告を公表しています」と記載されています。つまり、「避けるべき油」といえます。
パーム油は日常生活で直接目にすることが少ないため、一般には馴染みのない植物油ですが、アイスクリーム類だけでなく、カップ麺やフライドポテトの揚げ油など、さまざまな食品に知らぬ間に使われている「隠れ油」の代表です。日本では、一人当たり平均して年間4リットルも摂取しているといわれています。
このパーム油を添加しているのはラクトアイスだけでなく、ひとつ上のグレードのアイスミルクにも使われています。アイスクリーム類を食べる時は、容器に表記されている成分表を見て、乳脂肪分8%以上の「アイスクリーム」を購入し、安全性に問題のある「隠れ油」は避けるようにしましょう。
当連載記事『日本人が大量摂取のパーム油は超危険!パン、菓子、カップ麺…発がんや糖尿病のリスクも』のなかでも、パーム油の危険性について詳しく解説しておりますので、ご高覧ください。
(文=林裕之/植物油研究家、林葉子/知食料理研究家)