「アメリカ人は建物に価値があり、土地にはあまり価値がないという考えです。それに対して、日本人は農耕民族で土着民族。『おらが土地』という考えがあり、自分の土地は自分で守らないといけないとの考えから、建物を軽視する考えが主流になっています」(佐藤氏)
3000万で買った家が5000万で売れる!
3つ目は税制の違いだ。アメリカでは住宅購入は投資と見なされ、給与所得者は確定申告をすると、住宅ローン金利や建物の減価償却が経費となり、所得税の還付を受けられる。また、売却時は建物を高く売却すれば現金収入が得られるので、日頃から建物のメンテナンスをしっかり行い、建物価値が下がらないように努力する。一方日本では住宅ローン減税はあるものの、所得税が優遇される制度はない。売却時も建物価値はほとんど無いに等しい。これも大きな問題だと佐藤氏は指摘する。
「アメリカ人は常に住宅の換金性、つまり売ったらいくらになるのかを考えています。一方日本人には、一度購入した土地は売却しないという考えが根付いています。これも、日本で中古住宅の流通が広がらない理由として挙げられるでしょう」
こうした背景が後押ししてか、アメリカでは3000万円で住宅を買い、20年住んだ後に5000万円で売るケースもある。DIYが流行しているのは、手をかけ、家の価値を上げることで高く売れるからだ。また、良い中古住宅が家具付きで売られてもいる。映画でも家具に白い布をかぶせて売られているシーンを見たことがあるだろう。家具もアンティークなものほど高い。モノを大切に使う文化があるのだ。
このようにアメリカでは、中古住宅を手に入れ、自分たちの住みやすい空間へとつくり替える文化が定着している。その過程は楽しく、手をかけたことでより一層家が愛おしくなり、大切に使うようになる。加えて売却時に高く売れれば、現金収入を得ることも可能だ。
日本でもアメリカ式リノベーション術で中古住宅をバリューアップさせていけないだろうか? 日本には空き家が溢れている。なかでも、築20年以上の木造住宅は建物価値が0円同然で安く売られている。そんな古い家を安く手に入れ、リノベーションして暮らしてはどうだろうか?
(文=高橋洋子/暮らしのジャーナリスト)