いよいよ秋の気配が強まり、スポーツの秋到来だ。秋は気候が良く、風も涼しいので運動中の水分補給をつい忘れがちになる傾向があるが、脱水症は季節に関係なく起こる。涼しくても、水分は定期的に補給することを心がけたい。
ところで、「コーヒーやお茶など、カフェイン入りの飲みものは、脱水作用があるので水分補給に適さない」と思っている方も多いのではないだろうか。しかし、これは誤解であることが多くの研究によって証明されている。
研究では違いなし
2014年にイギリスのバーミンガム大学の研究チームによって発表された研究では、普段からよくコーヒーを飲んでいる男性50人を対象に、1日にコーヒーを4杯飲んだ場合と、水4杯を飲んだ場合の体内の水分量の変化を比較したところ、違いがみられなかったことが報告されている。
また、15年にはアメリカのアーカンソー大学で、男性34人を対象にしたカフェイン入り飲料と、カフェインなし飲料を飲んだ場合の比較実験でも、24時間の排出尿量に違いがないことが確認されている。
同様の研究は、古くは90年ほど前から繰り返し行われており、カフェインを含んだ飲みものを飲んでも、24時間の排泄量は増えないことが、複数の研究で確認されている。こうしたことから米国医学研究所では、日常の水分補給にカフェイン入りの飲み物は有効であると、結論を下している。
なぜカフェイン入り=脱水と思い込まれているのか?
カフェインには利尿作用がある。カフェインを摂ると、交感神経が刺激されるため、腎臓の血管が拡張し、腎臓内の血流が増えるためトイレに行きたくなるのだ。この利尿作用が、脱水につながると誤解をされている原因と思われるが、実際はこうした利尿作用の影響はわずかなもので、24時間単位での尿量や身体の水分量の変化は、カフェイン飲料を飲んだ場合も、水を飲んだ場合も変わらないのだ。
また、普段からカフェイン入りの飲みものをよく飲んでいる人の場合は、カフェインに耐性ができており、利尿作用の影響もさらに少ないと考えられている。
最近ではコーヒーや緑茶などカフェイン入りの飲みものをよく飲んでいる人に、生活習慣病やがんを発症する人が少ないという研究結果が相次いで報告されている。スポーツ時もお茶を楽しみながら、脱水対策と生活習慣病予防につなげていきたい。
(文=安中千絵/管理栄養士、フードコーディネーター)