食べていても脳が栄養失調の現代人
――糖質を控えれば血糖値が乱高下することもなく、精神的にも落ち着くということですね。
姫野 脳にとってもっとも大切な栄養素である、たんぱく質を摂ることも大切です。もともと、日本人は糖質を摂りすぎの半面、たんぱく質が足りていないケースが多いのですが、脳の乾燥重量の40%はたんぱく質であり、神経伝達物質もそれをキャッチする受容体もたんぱく質でできています。そのため、たんぱく質を適切に摂取することで、脳の機能が活性化して頭の回転が早くなるといえます。
最適なのが肉や魚、卵、豆腐、大豆製品などです。糖質は吸収が速いため、食べてもすぐにお腹が空いてしまいますが、たんぱく質はゆっくり吸収されるため、腹持ちがいいエネルギー源です。朝食には菓子パンと缶コーヒーより、ゆで卵を1個食べるほうが、はるかに燃費がいいといえるでしょう。
――心身ともに健康を保つには、ご飯やパンといった炭水化物ばかりではいけないということですね。
姫野 私は「新型栄養失調」と呼んでいますが、ちゃんと食べているつもりでも、実は栄養不足になっている現代人は多いです。糖質(炭水化物)で満腹感は満たされますが、実は脳に栄養がいっていないので仕事がはかどらず、メンタルも崩しがちになってしまう……これは、企業にとっても大きな損失といえるでしょう。
以前、私が調べたところ、うつ病で休職している社員は1社につき約1割。年収600万円の社員が休職すると、企業は休職費用などで年間約1300万円のコストを負担するという試算もあります。そのため、企業としては社員の健康対策にお金を使って充実させるというのが、もっともコストパフォーマンスのいい投資になるのです。
朝起きられない人は鉄分不足?
――ほかに、ビジネスパーソンにとって大切な栄養素や食習慣を教えてください。
姫野 意外に多いのは、男性の鉄分不足です。貧血というと女性のイメージがあるかもしれませんが、心身の不調を訴える男性は鉄分不足になっていることが多いのです。特に「寝起きが悪い」「午前中は頭がうまく働かない」などの症状は要注意。鉄分は睡眠覚醒をコントロールするシステムに関係しているため、寝付きや寝起きの悪さに影響します。鉄分はビタミンCと一緒に摂ると吸収率が高まるため、レバーや牛肉、かつおなどにレモンをしぼったり緑黄色野菜を組み合わせたりするといいでしょう。
また、男性にとって重要な栄養素が「セックスミネラル」とも呼ばれる亜鉛です。薄毛や抜け毛に効果があるとされる亜鉛は、生殖機能とも密接な関わりがあり、男性機能の回復に役立ちます。また、前立腺肥大症やアルツハイマー病の予防にも効果があるとされており、記憶力や頭の回転の向上に寄与します。亜鉛は鉄分と同じくレバーや牛肉のほか、牡蠣やホタテ貝に豊富に含まれています。
(構成=編集部)
心療内科医・医学博士
ひめのともみクリニック院長・日本薬科大学教授・東京医科歯科大学医学部卒業
分子整合栄養医学に基づく栄養療法を実践し、日々診療に当たっている。糖質制限をいち早くメディアで紹介し、テレビやラジオでも活躍中。主な著書に『成功する人は缶コーヒーを飲まない』(講談社)、『心療内科に行く前に食事を変えなさい』(青春出版社)、『美しくなりたければ食べなさい』(三笠書房)、『急に不機嫌になる女 無関心になる男』(青春出版社)など。
『成功する人は缶コーヒーを飲まない 「すべてがうまく回りだす」黄金の食習慣』 ビジネスマンの食の常識・非常識! 1.「会議で眠くなる人」が好むランチは●●定食 2.「若ハゲ」には●●がよい 3.残業時に●●を食べればやる気が上がる 4.“朝勃ち”が鈍い人は●●が足りていない 5.モテたいなら●●を食べろ! →答えは本の中で! 『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で大人気の診療内科医が伝授!
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