お姫様、巫女、魔女っ子、看護師、さらには、まさかのエヴァンゲリオン初号機……と、主演する剛力彩芽のコスプレ姿が毎回注目を集めるドラマ『レンタルの恋』(TBS系)。ただし、視聴率は1%台(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と低迷していて、その“大爆死”ぶりが逆に話題となっている。
『レンタルの恋』は、そのタイトルからもわかるように、男性客が業者に所属する女性をレンタルし、料金を支払ってデートを楽しむ「レンタル彼女」を題材としたドラマだ。レンタル彼女は、男性客の好きな場所でデートし、手をつなぎ、下の名前で呼び合うなど、まるで本物の彼女のように振る舞う。
剛力演じる高杉レミは、客のリクエストを完璧に遂行して必ず満足させる人気ナンバーワンにして“最強のレンタルの彼女”という設定だ。
実は、このレンタル彼女はドラマのなかだけの架空の業種ではなく、本当に存在する。では、現実のレンタル彼女も、剛力演じるレミのように、男性客の無理難題に応えたりさまざまなコスプレ姿を披露したりするのだろうか。本物の「レンタル彼女」として働く“みゆちん”こと宮崎美優さん(25歳)に、その実態について話を聞いた。
3時間1万9800円で個室NG…ボディタッチは?
待ち合わせ場所に現れたみゆちんさんは、キャメル色のコートにキャスケットをかぶり、女性らしい柔和な雰囲気の華奢でかわいい女性だった。もともと撮影モデルやアイドル活動をしていて、レンタル彼女を始めたのは3年前だという。
「私の場合、目的は完全にお小遣い稼ぎです。最初はレンタル彼女の存在も知らなくて、『ヤフオク!』で自分の時間を売るところから始めました。暇だったし、男性が『なんでも屋』のようなかたちで『1時間いくら』と出品しているのを見て『これ、いいかも』と思って。オークションなので0円でスタートし、そのときは3時間6000円くらいで落札してもらいました」(みゆちんさん)
レンタル彼女としての初仕事は、秋葉原観光。相手は40代の「普通のおじさん」で、特に危険なこともなく、メイドカフェやショップをめぐり、雑談して別れたという。
「レンタル彼女の専門業者もありますが、私はお店に所属しているわけじゃないので、かなり自由にやっていますね。デートの場所や日程は、ほとんどLINEでやり取りして決めています。もちろん、危ないことがないように、個室には入らないし、相手を信頼していなければカラオケもドライブもNG。ボディタッチは手をつなぐまで。それ以上はダメです」(同)
気になるデートのお値段は、基本的に3時間1万9800円の固定料金制。最初は、オークションで相手に料金を決めてもらい時給換算で1時間2000円からスタートしたみゆちんさんのレンタル彼女業だが、最近は顧客が増えてスケジュールを回しきれなくなったため、単価を上げて客数を絞っているのだという。
40~50代の独身男に人気、30万円以上支払う客も
『レンタルの恋』では、“最強のレンタルの彼女”であるレミが、コスプレをはじめ、アウトドア知識を披露したい客に山奥に連れ込まれたり、客のインターネット動画番組に出演させられたりする。決して安くはない料金を払っているだけに、「本物のレンタル彼女の利用客にも、こうした無理難題を要求する人がいるのでは……」と思ってしまう。
ところが、みゆちんさんによると、意外なことに実際の客の大半は紳士的かつ草食系で、ドラマと違ってわがままなリクエストをしてくる客はほとんどいないそうだ。
「私のお客さんのなかには、『これを着てほしい』とか『こうしてほしい』とか、いろいろ要望を言ってくる人はほとんどいません。せいぜい『秋葉原に行きたい』『動物園に行きたい』というふうにデート場所の希望ぐらい。全般的に、あまり女性に慣れていない人が多く、強引な人は少ないですね。だから、わいせつなことをしようとする人もいません。みなさん、私に『嫌われたくない』と思っているので」(同)
客層は比較的収入のある40~50代の独身男性で、なかには「お金の使い道がない」とぼやく客までいるという。実際、レンタル彼女とのデート代にしては高額すぎるお金をポンと支払う人もいたらしい。
「おもしろかったのは、“鉄ヲタ”のお客さんと一緒に寝台特急のカシオペアに乗って札幌まで行き、飛行機で帰ってきたデート。カシオペアが運行を終了するときだったので、チケット代が相当高かったみたいです。私に払うデート代も含めると、30万円以上はかかったんじゃないかな。
でも、その人はひたすら電車の話をするだけで、それ以外はずっと車内の写真を撮っていました。カシオペアに乗ることが目的だったので、寝台特急で9時間かけて札幌に行ったのに、現地には30分も滞在しないで帰ってきちゃいましたけど(笑)」(同)
レンタル彼女、客からの告白や違反行為は?
ほかにも、動物園や映画館、居酒屋など、カップルの定番系デートをはじめ、東京から大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行くという旅行レベルのものまで、みゆちんさんはレンタル彼女としてさまざまなデートをしている。新規の客は、月に3~5人。基本的には、なじみのリピーターを中心に、多いときは週5回、年間で200回以上のデートをこなしている。
しかし、それだけの数の男性客とデートを重ねているのに、本当に嫌なことをされたり無茶な要求されたりしたことはないのだろうか。みゆちんさんは、「レンタル彼女をやっていて、嫌な思いをしたことはありません」と断言する。
「確かに、うつ病を患っていたり人と関わるのが苦手だったり、メンタル的に不安定でネガティブな人も多いです。『バイバイ』と別れるとき、お客さんに泣かれたこともありました。でも、そういう人に対しても、別に引いたりしないですよ。
強いて言うなら、ヒールを履いているのに長時間歩かされたときは、足が痛くてつらかったですね。女性に慣れていないお客さんが多いので、そうした女性への気遣いを私で練習して、本当のデートのときに生かしてもらえたらうれしいです」(同)
みゆちんさんは、同じ女性の筆者でも話していると「キュン」としてしまうくらい愛嬌があり、笑顔がまぶしい「彼女」だ。おそらく、男性客が本気で彼女に好意を持ってしまうケースも少なくないだろう。
「直接、はっきりと告白されたことはないです。もし『好き』っていう感情があったとしても、それを絶対に言わないような人ばかりなので……。私は恋愛関係になってもいいと思っているんですけどね。なんだったら、私のことを落としてほしいぐらいです」(同)
『レンタル彼女』の高杉レミとはタイプが異なるが、3年間も個人でレンタル彼女をやっているだけあって、やはりみゆちんさんもただ者ではないようだ。ドラマの影響で、彼女にコスプレ姿を求める客が増えないことを祈りたい。
(文=藤野ゆり/清談社)
●宮崎美優公式サイト「みゆちん」
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