「老人化する子供」の骨折増加…サプリで栄養補給&炭水化物依存が体を滅ぼす
サプリで血糖値を下げるという発想の間違い
少し前まで、骨は一定の内容を維持していると考えられていたのですが、実は、硬い骨も常に内容物の入れ替わりがあり、骨に貯蔵されているカルシウムも、血中のカルシウム濃度を一定に保つために使われていることがわかりました。
そして「オステオカルシン」というたんぱく質が、骨芽細胞によって合成され、また骨の代謝や形成に深くかかわっているということもわかりました。さらに、オステオカルシンは、さまざまな内臓器官にも影響を与えていることも突き止められたのです。
特に注目されているのは、膵臓のベータ細胞を刺激し、インスリンの分泌を促すことから、血糖値を下げ、結果的に糖尿病の予防に役立つ可能性があるという点です。この作用に目をつけた製薬メーカーからは、オステオカルシンのサプリメントが販売されていますが、筆者は健常な人がこのサプリメントを多量に摂取することには賛成できません。たとえ一時的にオステオカルシンの働きによってインスリンの合成が活発になったとしても、そこには自ずと限界があります。
私たちが摂る食事は、微妙なバランスの上に成り立っています。そのバランスの崩れのひとつが、炭水化物の摂取の仕方によって起こっているのです。そのアンバランスな炭水化物の摂り方をそのままにしておいて、サプリメントで膵臓の働きを活発化し、インスリンを多量に出して血糖値を下げようという発想は、間違っているように思えます。
人間は、多種類の栄養素を必要としている動物です。その多種類の栄養素をうまく組み合わせて、体の中で使いこなすことによって、人類は生き延びてきたのです。つまり、それは、長い年月をかけて獲得してきた人類特有の能力のひとつなのです。さまざまな地域で、その土地の産物、季節の恵みを活用して「豊か」な食卓を創り上げることこそ、文化の象徴といえるのではないでしょうか。
三島由紀夫は、かつて、こんなことを述べています。
「文化というものは、目に見える形になった結果から判断していい」
まさに、そのとおりだと思います。食文化というのは、さまざまな要素が織り交ざりあって形を成して、できあがるものです。それを理解しない人が多すぎることに、憤りさえ感じます。「頭」という字にも、豆が使われています。ぜひ知恵をもって理解していただきたいと思います。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)