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「トイレが近い&尿漏れ」の恐ろしい話…放置すると深刻な事態、治療→EDの負のスパイラル

文=吉澤恵理/薬剤師

前立腺肥大症の治療薬

 前立腺肥大治療薬は、次の3つに分類されます。

【アルファ1遮断薬】
 交感神経から伝わる刺激をブロックすることで、前立腺や尿道の平滑筋の緊張を緩めて排尿障害を改善します。前立腺を小さくする作用はありません。

【5アルファ還元酵素阻害薬】
 テストステロンをジヒドロテストステロンに変換する5アルファ還元酵素の作用を抑え、前立腺を小さくします。

【抗男性ホルモン薬】
 テストステロンの作用を抑えることで、前立腺を小さくします。

 これらの治療薬には、個人差はあるものの副作用として性機能障害の報告があります。そこに新しいタイプの治療薬として、PDE5阻害薬のザルティアが登場しました。

 筋肉を弛緩させるcGMPという物質は、ホスホジエステラーゼ-5(PDE5)という酵素によって代謝され作用を失います。尿道にあるPDE5を阻害することでcGMPの作用が強まり、尿道の筋肉を緩め排尿障害を改善します。ザルティアは、ED治療薬としてすでに販売されているシアリスと同じ成分のタダラフィルです。そのため、ほかの前立腺肥大治療薬と異なり、副作用として性機能障害は起きないと考えられます。

 用量はシアリスに比べ低用量ですが、ED改善を目的に服用しても効果を感じられるでしょう。しかし、あくまでザルティアは前立性肥大治療薬で、その処方には「適切な検査で診断を確定すること」が必要です。確定診断には、前立腺や残尿などの超音波検査、尿流量測定など、排尿機能の検査をする必要があります。

前立腺肥大治療薬とED治療薬の併用

 前立腺肥大治療薬とED治療薬の併用は、一般的には問題ありません。薬において、一緒に服用すると健康被害が起きるものは「併用禁忌」とされますが、前立腺治療薬とED治療薬には「併用禁忌」がありません。

 最近では、男性にも更年期があることが知られるようになり、その専門外来なども増えています。その症状のひとつに性欲減退があり、加齢による男性ホルモンの変化が深く影響しています。男性ホルモンの変化により前立腺肥大が起きることも多く、更年期に排尿障害を訴える男性も少なくありません。更年期を乗り切るには、QOLの実現が大切です。EDなどの性機能障害については、相談することを恥ずかしいと思う方も少なくないかもしれませんが、躊躇せずに医師や薬剤師に相談し、QOLを維持した治療を選択することをお勧めします。
(文=吉澤恵理/薬剤師)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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