タバコ、法的に禁止しては?全面禁煙の一方、糖尿病激増の元凶=砂糖飲料OKはおかしくない?
今日は、禁煙についてのお話です。“極論君”は「病院の全面禁煙は大賛成」という主張です。一方で、“非常識君”は「法律を犯しているわけではないのに、愛煙家がちょっとかわいそう」という意見です。
“常識君”の解説です。
「多くの病院で健康増進法に基づいて、敷地内禁煙が広がっています。健康増進法は平成15年5月1日に施行された法律で、がんや心臓病、糖尿病といった生活習慣病を防ぎ、健康長寿を目指した国の健康づくり運動「健康日本21」の法的な基盤となっています。そしてその第25条で、多数の物が利用する施設(病院、学校、百貨店、飲食店、官公庁など)の管理者に対し、受動喫煙の防止措置をとるよう努めなければならない、と定めているのです」
非常識君の意見です。
「完全に隔離されてほかの患者さんには迷惑にならないように配慮された喫煙ルーム、つまり受動喫煙の危険がシャットアウトされている空間も用意されていない病院が増えて、まったくタバコを吸う場所がなく、入院患者さんが敷地外で喫煙して近所迷惑になっているといったクレームも耳にします」
極論君のコメントです。
「タバコが肺がんをはじめ、いろいろながんのリスクファクターであることは今では異論がないと思います。また、慢性閉塞性肺疾患は、COPDともいわれていますが、ほとんどはタバコが原因です。病院が喫煙できない環境を提供することは、公衆衛生という観点からは理にかなっていると思います」
非常識君の意見です。
「そんなにタバコが悪いのであれば、いっそ法律で禁止すればいいではないですか。または、高額なたばこ税を課して、タバコ1箱3000円ぐらいにしてもいいと思います。」
極論君の意見です。
「もちろんその意見に賛成ですが、実際問題としてそこまではできません。ヨーロッパのタバコの箱にはタバコの害に関する衝撃的なメッセージや写真が掲載されています。そんな点でも実は日本は遅れています」
砂糖入り飲料の自動販売機は撤去すべき?
非常識君の意見です。
「タバコだけが悪役のようで、僕はどうも納得できません。今や糖尿病は日本では約700万人が罹患し、そして予備軍を含めると2000万人とも見積もられています。そして、この40年間で3万人から700万人に激増しました。その原因の多くは炭水化物の過剰摂取による肥満と思われます。病院内を全面禁煙とするのであれば、病院内では砂糖が入った清涼飲料水や、甘いものなどを売ることを控えるべきと思います。そして肥満をつくり出す可能性が高い物品の自動販売機は、撤去というのはどうですか」
極論君のコメントです。
「3大栄養素は炭水化物、脂肪、タンパク質です。炭水化物の過剰摂取は脂肪として蓄積されます。脂肪の過剰摂取も脂肪として蓄積されます。一方で、タンパク質は、それ自体は余剰となっても備蓄できませんが、タンパク質につきものの脂肪は蓄積されます。炭水化物は、主食、甘いもの、果物です。主食は米、麦、うどん、そば、パスタ、パンなどです。この40年間で糖尿病が急増した原因のひとつは、間違いなく炭水化物の過剰摂取です。炭水化物を多く含むおいしいものは、巷に氾濫しています。そして最近は極めて安価です。公衆衛生という観点からタバコを追放しようという作戦を展開するのであれば、同じように炭水化物の過剰摂取を制限することは理にかなっています」
常識君のまとめです。
「タバコはできれば一本も吸わないほうが健康にいいと思われます。一方で、炭水化物は過剰摂取が問題なので、完全に炭水化物を追放することの是非は議論の余地があります。そうするとどこまでが適量かが判然としないので、すべての砂糖入り清涼飲料水の自動販売機の追放というのは、無謀になると思います。まずは、糖尿病の増加と炭水化物の危険の啓蒙が大切でしょう」
タバコから糖尿病に話が展開して、3人とも同じような意見に落ち着きました。
(文=新見正則/医学博士、医師)