想定外の台風に備えるには
「台風から、だいぶたっているのに、ブルーシートをかけたお家が、まだまだあった」
先日、千葉に出かけた友人の感想だ。2019年9月の台風15号・房総半島台風で、大きな被害を受けた千葉県。1年以上がたった現在でも、屋根のブルーシートがいまだに目立っている状況です。これは、被害の大きさに、修理が追いついてないことを物語っています。
窓ガラスは「台風の風」で割れるというより、「風で飛んできたモノ」で割れます。それは、傘であったり、木の枝であったり、隣の瓦であったりして、その飛来物が、弾丸さながらに飛んできます。
窓ガラスに養生テープを貼るといい?
窓ガラスに養生テープを貼って飛散を防止するという方法を、テレビなどで見たことあると思います。割れたときに飛散防止になるということで、手軽にできる台風対策と紹介されていました。これは、戦時中のドラマで見る「紙を貼ってある窓ガラス」と同じ原理ですね。
しかし、実はこれはあまり役には立ちません。窓ガラスが割れる前提の対策なので、テープを貼った部分以外に飛来物が飛んでくると、まったく意味はなさないということです。もし貼るなら、ガラス全面に「飛散防止シート」を貼らないと意味がないといえるでしょう。
台風は、ゴルフネットで防ぐ?
さて、毎年数多くの台風が通過する「台風王国」沖縄では、どのような窓ガラス対策を行っているのでしょうか。当たり前ですが、飛散防止より「割らない工夫」が重要。台風が多い沖縄では、「建物にネットを張る」方法が一般的です。台風発生とともに、ホームセンターでは「防風ネット」が売り出されます。ネットといっても「ゴルフネット」「農業用ネット」「防鳥ネット」を、そのまま「防災用品」として販売しています。
ネットは、台風で飛んできた飛来物の衝撃を吸収させるためのものです。バッティングセンターやゴルフの打ちっぱなしにある「緑のネット」と同じ原理ですね。ネットが受け止めてくれる「飛来物」は、窓ガラスまで届いても、ガラスを突き破ることはめったにないそうです。
ネットの取り付け方はさまざまですが、簡単なものなら、窓ガラスの上のひさしにネットの上を固定し、下は重しを付けて置くだけで済ませている家もあります。また、本格的なハリケーンにも対応するアメリカ製の「防風ネット」を張ってくれる専門業者も存在します。
台風直前直後の沖縄では、どこへ行っても緑色の防護ネットで覆った家が多数出現します。壁全面にネットを張っているビルも珍しくはありません。
ガラス窓は、ベニアで塞ぐ
雨戸やシャッターのない窓であれば、ベニア板を張りましょう。扱いやすいプラスチックダンボール(プラダン)でも良いでしょう。ベニア板を、防水テープでしっかり貼れば、剥がれません。心配であれば、釘やネジで固定しましょう。
ちなみに、沖縄では雨戸より鉄格子を付けている家が多くみられます。飛来物からガラスを守り、通風も可能、防犯にもなります。
窓ガラスが割れると、ガラスの飛散によるケガ、風雨の吹き込みによる天井、照明、家具、家電の故障、さらには風圧で家の内側から屋根が吹き上げられると、家そのものが破壊されます。
沖縄といえば、あの独特の「赤い瓦屋根」。丸く凸形になっているものを男瓦、凹形のものを女瓦と呼び、主にこの2つを漆喰で留めて屋根を葺きます。しっかり留めてあることで、強風に煽られても瓦が飛ぶことのない仕様になっています。美しいだけでなく、風土気候にあった「屋根」なのです。
地球温暖化の影響、海面温度の上昇などの影響で、台風の大型化が進んでいます。自然災害は、ときとして想像を超える力で襲ってきます。今後の防災対策も、常に見直していく必要がありますね。
(文=草野かおる/イラストレーター・防災士)