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完璧な「避妊法」が完成間近?高い有効性の「避妊注射」は副作用で自殺者も…

文=ヘルスプレス編集部
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完璧な「避妊法」が完成間近?高い有効性の「避妊注射」は副作用で自殺者も…の画像1「Thinkstock」より

 人生は、まさにトレードオフの劇場――。こちら立てれば、あちら立たず。そんなジレンマのシーソーゲーム。避妊(contraception)もそうだ。

 既婚でも未婚でも不倫でも、もし妊娠・出産を望んでいないのであれば、愛し合う男女に避妊という避けられない大関門が待ち受ける。厳しくも涙ぐましい試練ではないか。今回は、特に男性の避妊法のエポックを探ってみた。

副作用が多く、開発が断念された避妊注射

 射精、オーガズムの官能的快楽や愛情表現が性交渉だが、無制限な妊娠・出産から生じる倫理的・経済的・社会的な負担やコストを回避する手段、それが避妊ではある。

 とはいえ、不妊手術(パイプカット、卵管結紮術)をはじめ、コンドーム、ペッサリー、IUD(子宮内避妊用具)、オギノ式、基礎体温法、ピル(経口避妊薬)などのメソッドがあるものの、パーフェクトな避妊法はない。コンドームは必ずしも確実ではなく、パイプカットは元に戻しにくい。ピルは副作用もあり、女性の負担が重いからだ。

 『避妊は女性がするものか? 男性用「避妊注射」は効果も副作用も高い!実験では自殺者も!』などの記事では、男性用の避妊注射実用の可能性が低いことを紹介してきた。

 世界保健機関(WHO)リプロダクティブヘルス研究部門のMario Festin氏らが実施した国際的な臨床試験では、避妊注射の有効性はほかの避妊法と比べても良好だと示されたものの、副作用が高頻度に見られたため、早期に中止されてしまったのだ。

 これは、テストステロンを別の性ホルモンであるプロゲストゲンと併用することにより、副作用を制限するとともに効果を増大させることを目標とした。治験者は世界7カ国、18~45歳の健康な男性320人。被験者はいずれも精子数が正常で、18~38歳の女性パートナーと1年以上、1対1の交際関係にあった。

 被験者に8週間ごとにテストステロン/プロゲストゲン注射を投与したところ、そのうち274人では精子数が目標値の100万個/mlまで低下した。このうち266人について研究を継続した結果、妊娠率は100人あたり1.57人で、これはほかの可逆的避妊法と同程度であった。

 しかし、注射に関連する可能性の高い副作用が771件発生し、特に挫瘡(にきび)、性欲増大、筋肉痛、気分障害および情緒障害がよく見られた。20人が副作用のため脱落し1人が自殺、最終的には本試験の早期終了に至った。

マウス実験では男性用ピルの可能性が!

 しかし「ついに男性用ピルの解禁か」という、胸高なる垂涎のビッグニュースが飛び込んできた。大阪大学の分子生物学や遺伝子学の研究者らは、マウスを使った遺伝子操作の実験を重ね、カルシニューリンという酵素が可逆的かつ迅速に作用する男性用ピルになり得ると『Science Expressジャーナル』(2016年10月1日号)に発表した(「foxnews」2017年1月5日付)。
http://www.foxnews.com/health/2015/10/05/male-birth-control-treatment-could-focus-on-sperm-proteins-not-hormones.html

 発表によると、オスマウスのカルシニューリンの生成をブロックすると、着床する精子ができない事実が判明。つまり、カルシニューリンができないようにオスマウスを遺伝子操作すると、メスマウスは妊娠できなかった。

 カルシニューリンは、脳神経系に豊富に存在し、シナプス可塑性、記憶・学習、細胞内カルシウムや遺伝子の発現調節、アポトーシスの制御などに深くかかわる脱リン酸化酵素だ。

 また、また別の実験では、オスマウスにカルシニューリンの働きを阻害する2種類の薬剤(臓器移植後の急性拒絶反応を抑制するシクロスポリンAとFK506)を投与したところ、精子が泳げず受精に至らなかった。

 だが、投薬を止めると、1週間以内に精子の活性力が一気に回復した。さらに、腎臓移植後にカルシニューリンの働きを阻害するシクロスポリンAを服用した男性9人のうち3人は精子の機能が阻害されなかったので、受精に成功し子どもをもてた。

 カルシニューリンは、脳神経系にある酵素であり、性ホルモンではないため、副作用も性欲減退やうつに襲われるリスクも低い。性ホルモンの作用を受けないピルなら、男性が受け入れやすく、女性のメリットも大きい。

 精液には感情を高ぶらせるコルチゾールやエストロン、愛情ホルモンのオキシトシン、坑うつ作用の強いセロトニンなどが多量に含まれるため、幸福感を高める。

 このような精子の機序や男性用ピルの研究は、オーストラリアのモナッシュ大学のサバチーノ・ベンチュラ博士やアメリカの研究機関でも進んでいる。

 ただ、マウスの実験段階なので、ヒトへのエビデンスはないが、男性用ピルのデビューが秒読みに入っているのは確かだ。近い将来、男性もピルを飲む日がくるだろう。

 そのほか、インドネシア国立家族計画調整委員会とアイルランガ大学の研究者らは、ガンダルサと呼ぶ葉に受精能力を低下させる成分があり、99%の有効率がある事実を大規模な治験で確認。男性用ピルの開発が加速している(GlobalPost.com/Indonesia’s New Male Birth Control Pill is ‘99 Percent Effective’2014年12月4日)。期待しよう。
(文=ヘルスプレス編集部)

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