債権団と交渉の結果、予測されてきたギリシャの結末は3つだった。チプラス現政権誕生時に打ち出した脱緊縮をあきらめ、債権団の要望に屈する。お互いが譲歩して着地点を見いだして、支援策を受け入れ、ユーロに残留する。最悪の結末は、デフォルトしてユーロ圏を離脱する。「茶番」と指摘されたのは、チキンレースを繰り広げながらも、土壇場でお互いがブレーキを踏むとの見方が支配的だったからだ。
ところが、チプラス政権は賭けに出た。欧州中央銀行(ECB)やIMFなど債権団が支援継続の見返りに要求した改革案を受け入れるかを、7月5日に国民投票で決めるとチプラス首相が6月27日に突如発表。寝耳に水のECBは支援を見送り、ギリシャは30日に返済期限を迎えたIMFへの債務15億4000万ユーロ(約2064億円)が債務不履行に陥った。
事態は急変してユーロ圏離脱も視野に入ってきたが、金融システムへの影響は直接的には少ない。前回の欧州債務危機を受け、ユーロ各国は財務状況や労働市場を改善。危機の連鎖の可能性は小さくなっている。制度的にもユーロ圏における資金支援の枠組みや国債市場介入の仕組みなど、セーフティネットを整備。たとえギリシャが離脱する結論を出したところで、影響を極小化する体制を整えてきた。
「ギリシャのGDPは神奈川県と同程度にすぎない。ドイツがギリシャ危機を煽ったのは、ユーロ安が国内製造業の追い風になるから。ギリシャが残留しても周期的に財政危機に陥るのは明らか。離脱したほうがユーロ圏の金融システムは長い目で見れば安定する」(アナリスト)。
ギリシャが強気の理由
とはいえ、ユーロ圏の盟主ドイツがギリシャ離脱を楽観視できない材料もある。それが、破綻寸前ながらもチプラス政権が強気な姿勢を崩さない理由でもある。
ひとつの懸念が、ギリシャとロシアの接近だ。交渉が大詰めを迎えた6月19日、チプラス首相はロシアのサンクトペテルブルクに現れ、プーチン大統領と会談。天然ガスパイプラインをギリシャに延ばすことで合意した。「ロシアとの協力を拡大したい」と述べ、ウクライナ危機でEUと対立するロシアに接近することで揺さぶりをかける。