骨粗鬆症という病気は、病院でも骨密度検査が一般的になりつつあるので、皆さんもご存じだろう。
骨粗鬆症は、骨密度が低くなることで骨折しやすくなる病気だ。高齢者に多く生じ、症状が進むと、転んだ場合をはじめ、手をついたり、くしゃみをするだけで骨折してしまうことがある。
そんなことから「骨粗鬆症=高齢者」をイメージしがちだが、骨量は20~30代でピークを迎え、40代半ばから減少に転じる。特に女性の場合、閉経後は10年間で15~20%も減るといわれている。骨を守る女性ホルモン「エストロゲン」が減るからだ。
将来、骨粗鬆症になりたくなければ、40代から骨量を意識することも大切だろう。
骨粗鬆症が招く「負のスパイラル」
高齢者にとって深刻なのは、骨粗鬆症の人が骨折すると、完治するまでの時間が普通よりも長くかかってしまうことだ。
たとえば、骨粗鬆症で生じやすい骨折には、「圧迫骨折」「上腕骨近位端骨折」「頭骨遠位端骨折」「大腿骨頸部骨折」がある。そのなかでも高齢者に多いのは、転倒して脚の骨を折ってしまう「大腿骨頸部骨折」だ。この骨折は、骨粗鬆症によって「負のスパイラル」に陥る可能性が高い。
大腿骨頸部骨折の場合、手術を行わないでギブス固定などを行う「保存療法」か、骨整合術や人工骨頭置換術をなどを行う「手術療法」が選択される。しかし、いずれの治療法を選択しても、骨がくっつくまでの期間は、通常の患者よりも長くなってしまう。
すると、その間、立つことができないために、寝たきりや車椅子での生活を強いられる。それによって筋肉量が低下し、骨折が治っても立つことができない「寝たきり生活」に陥り、さらには認知症になる危険性も高まる。
このような「負のスパイラル」によって、本来のケガである大腿骨頸部骨折が回復しても、歩けなくなったり寝たきり生活を送ることになってしまうのだ。骨粗鬆症に対する治療と予防がいかに重要なのかがわかる。