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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

バリウム検査、なぜ発がんの危険&がん断定不可なのに実施?初めからピロリ検査しない事情

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

 さらに、バリウム検査では連続してレントゲン撮影するので、複数回X線を浴びることになります。その被爆量は15~20ミリシーベルトで、胸部X線写真を撮影する際の150~300倍の被曝量といわれています。人体に影響がない範囲とされていますが、当然発がんのリスクも高まると考えられます。

 食道や胃にバリウムの流れが悪くなる場所があれば、胃がんやポリープなど腫瘍がある可能性が疑われるため、後日、胃カメラ検査を行うことになります。

 胃カメラ検査は内視鏡検査のことで、カメラを挿入して胃の中をモニターで確認することができます。カメラを粘膜面に近づけて観察することができるので、胃の状態を詳しくチェックすることができます。

 以前は、胃カメラを口からうまく入れられずに苦しい思いをしたという方も多くいましたが、今は鼻から挿入する細いスコープも一般化し、非常に楽に受けることができるようになりました。

 また、胃カメラで内部組織を採取することも可能となり、早期の胃がんであれば、外科的手術をすることなく、胃カメラでモニターを見ながら腫瘍を切除する「内視鏡的治療」を行うことも多くなっています。

バリウム検査だけでは胃がん、食道がんはわからない

 バリウム検査を受けると、「所見」の欄に「胃がんや食道がんの疑いあり」といった記述がなされることがあります。このような場合には、医師から「胃カメラを受けてください」といった指示を受けます。なぜなら、胃粘膜表面の情報は、バリウム検査より内視鏡検査のほうが、より詳しく正確にわかるからです。

 つまり、バリウム検査では「がん」の断定はできないということです。大きなものなら見つけることもできるかもしれませんが、バリウム検査で「早期発見」はできないのです。バリウム検査で「疑い」があれば、内視鏡検査で「確認」するという過程を必ずたどるのです。では、「はじめから内視鏡検査をすればよいのではないか」という議論が盛んに交わされていますが、まさにその通りです。

 身体に良いはずもないバリウムを飲み、発泡剤によってこみ上げてくるゲップを我慢し、多量の放射線を浴び、下剤を飲んで慌ててトイレに駆け込むことを強要される検査に、メリットは何もないのです。

 それにもかかわらず、なぜバリウム検査がなくならないのでしょうか。

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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