「アルカリ電解水」というワードが22日午前、Twitterのトレンドに突如として浮上した。同日朝放送の情報番組『あさイチ』(NHK総合)の「クイズとくもり 年末大掃除 ピッカピカ大作戦』というコーナーで「キッチンの頑固な油汚れに効く“魔法の液体”」としてアルカリ電解水が紹介されたのがことの発端だ。同コーナーを見たTwitterユーザーの一人が、とあるライフハックサイト上で紹介されていた非科学的なアルカリ電解水の作り方を発見し、「電気分解していないのに電解水を騙っていて、誤解を招く内容だ」などと拡散したようだ。
アルカリ電解水は電気分解でつくられる
そもそもアルカリ電解水とは何か。便利な掃除用具として知られるスポンジ「激おちくん」を製造・販売するレック株式会社の「水の激落ちくん」公式サイトにわかりやすい説明があったので、下記引用する。
「水を独自の方法で電気分解することによって得られるマイナスイオンを多く持つ水です。電解水とは直流の電流をかけて電気分解して得られた水溶液の総称です。普通の水道水は十分な電流を流すことができないため、水の伝導率を大きくするために食塩などの電解質を添加して電気分解を行ない、陰極側に得られた水溶液がアルカリ電解水となります。得られたアルカリ電解水は油脂やタンパク質などの有機物に対する洗浄能力があります」
つまり電解質を添加した水を電気分解して、H⁺、OH⁻に分離し、OH⁻を多く含む水を採取したものがここでいう掃除に使えるアルカリ電解水ということだ。ところが、問題となっているライフハックサイトには、次のような説明がなされていた。
「用意するものは『水』『空のスプレーボトル』『セスキ炭酸ソーダ』の3つ。水を500ミリリットル入れて小さじ1杯のセスキ炭酸ソーダを混ぜ、よく溶かそう。これだけでアルカリ電解水が作れる」
この製法に関して、神奈川県立産業技術総合研究所の関係者は次のように説明する。
「セスキ炭酸ソーダとは、炭酸ナトリウムと、世間一般に『重曹』と呼ばれる炭酸水素ナトリウムが複塩として共存し安定している状態のアルカリ剤のことです。このサイトの説明を見たところ、電気分解をしていないので電解水ではありません。ただ、セスキ炭酸ソーダ水でも、アルカリ電解水でもどっちも汚れは落ちるとは思います。重曹を含む溶液はよく油汚れを落せることで知られていますよね。
ただもし万が一、このサイトに掲載されているような製法で作った『アルカリ電解水』が販売されていたら、大きな問題だと思います」
今年は新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、“似非科学”と批判されるようなデマが蔓延している。大掃除の季節を迎え、科学的な根拠の薄い掃除用品などが売りに出されている可能性もある。まだまだこの手の話題は続きそうだ。
(文=編集部)