人生の一大イベントである出産。その出産をどの産婦人科で行うかは、妊婦とその家族にとって非常に重大な決断であろう。そのために、インターネットで検索したり、人から評判を聞いたりして、できる限りの情報を集めようとするのではないだろうか。しかし、口コミサイトで得られる病院に関する情報は、基本的には、表層的で良い内容のものが圧倒的に多い。 「ご飯がおいしかった」とか「とてもいい先生です」とか。
一方、悪い内容は、たとえ本当のことであってもなかなかサイトに載せてもらえないのが現状だ。ときどき、「部屋が古かった」などという、小さな悪評が載ることはあっても、それは命や金銭に関わることではない。サイト側は、悪い内容を掲載していることで、病院から訴えられるのが怖いのかもしれないし、そもそも、医療機関側の協力がないとサイトの運営が成り立たないという面もあるだろう。
筆者には知人に看護師が数人いるが、彼女たちから聞く、病院の実態には驚愕すべきものが多い。今回はその中で、関西地方で助産師として働く知人Kに、自身が見てきた産婦人科の内実を聞いてみた。Kは、無痛分娩での医療事故が明るみになった京都府の産婦人科にも勤めたことがある人物で、取材に対して、堰を切ったように語り始めた。
「大きな病院は人の目があるからそんなに酷いことは大っぴらにできないけど、小さな産院はほんまにやりたい放題やで」
以下は、Kが実際に勤務していたという、JR環状線の玉造駅からほど近い、大阪市内のある産婦人科の話だ。
妊婦の出産時に看護師長が “気絶”
――院長の年齢は? どんな人?
K 現在70代の院長は2代目。親から今の医院を継ぐ前には別のところで勤務してたんだけど、そこで今の(看護)師長に出会って自分の医院に引っ張ってきてな。今もその師長は働いてるわ。院長は既婚者にもかかわらず、その人と不倫関係にあって、その師長がまたトンデモないおばはんで……。
――師長は何歳ぐらい? どんなふうにトンデモない?
K 年齢は50代後半で未婚。名物師長で、仕事をしたくないから、面倒臭い出産の時はたびたび気絶しよるんや。気絶してる“ふり”やけどな。患者が出産してる横で倒れたりするんだけど、その倒れ方がおかしくて、絶対に頭は打たない。しかも、手袋についた患者の血が自分に付かないように、手を前にならえの状態で倒れよる。
――それはひどい。
K それに、ほんまにセコくて……。そこの病院は、賄いのランチが美味しいうえに栄養バランスも考えられていて評判で、月7000円払えば、何回食べても良いというシステムだった。とはいえ、もともと夜勤がある看護師がランチを食べる回数は、多い人でも月10回ぐらいになる。他方で、受付担当や外来専門の、夜勤のない従業員は毎日食べられるわけ。そうしたらある時、その師長が「受付と外来専用の従業員には、ランチの賄いは取らせません」って決めたんや。それからは、地方から来て一人暮らしをしてる子がカップラーメンを食べている横で、その師長は毎日、平気でそのランチを食べとったわ。
患者が初産婦ばかりの“理由”
――助産師時代の給料は?
K 基本給はだいたい18万円ぐらいで、本来なら残業手当がつくはずなんだけど、その師長が言いくるめて付けてくれなかった。「まだあなたは仕事できない」「その仕事ぶりでは、手当は出されへん」と、自信を失くさせるようなことばっかり言うて。
――手取りはいくらぐらいになる?
K 手取りにしたら月13万円。時給に換算したら、ざっと1000円ほどやわ。生活保護額と変わらん。
――その師長の給料は?
K びっくりすんで。約1000万円。だから医院のコストを下げようと必死やねん。自分の給料をちょっとでも上げたいから。