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森由香子「間違いだらけの食」

牛乳、病気リスク増の可能性はあるのか?

文=森由香子/管理栄養士
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牛乳、病気リスク増の可能性はあるのか?の画像1「Thinkstock」より

 牛乳は、改めていうまでもなく、カルシウムが豊富であり、効率良くカラダへ取り入れることができる食品です。骨を構成する主成分のカルシウムは、骨粗しょう症の予防にもなり、骨折による寝たきり予防にもつながります。

 しかし、牛乳は「カラダに良い」「カラダに悪い」と意見が分かれがちなため、まったく摂取しない方も多い食品のひとつでもあります。

 近年、牛乳が、健康な脳をいつまでも維持するために効果的な食品であることがわかってきました。それは、九州大学大学院の清原裕教授が行った研究結果から明らかになりました。

 同研究は1988年に始まり、福岡県久山町の住民のうち、60歳以上で認知症のない人を、牛乳・乳製品の摂取量で4つの群に分け、17年間追跡調査したものです。

 その結果によると、牛乳・乳製品の摂取量の増加に伴い、アルツハイマー病、血管性認知症の発症率共に、低下したことがわかりました。

 では、牛乳・乳製品には、どのような働きが隠されているのでしょうか。

 米国のカンザス大学医療センターの研究によると、平均68.7歳の60人を対象に脳内のグルタチオン濃度を調べた結果、牛乳の摂取量が多いと、脳内の前頭葉、頭頂葉、前頭頭頂葉におけるグルタチオン濃度が高くなることがわかりました。

 グルタチオンは、抗酸化物質のひとつで、脳のなかで活性酸素による酸化ストレスを抑える働きや、活性酸素によって傷ついた細胞を修復する作用、毒素を細胞の外へ排出させる解毒作用があります。

 脳の細胞が活性酸素による酸化ストレスでダメージを受けると、アルツハイマー病をはじめ脳神経系疾患を引き起こすとされています。前述の久山町の追跡調査から、牛乳・乳製品に多く含まれるビタミンB12、ホエー蛋白質、カルシウム、マグネシウムが認知症に対して予防効果があることがわかりました。

 ビタミンB12は、アルツハイマー病の危険因子と報告されている血しょうホモシステイン値を低下させる働きがあることがわかっています。ホエー蛋白質(牛乳蛋白質の20%にあたる、加熱で凝固する成分)は、アルツハイマー病の危険因子であるインスリン抵抗性を改善させる可能性があるとの報告もあります。

 カルシウムは、不足すると副甲状腺ホルモンが分泌され骨からカルシウムを溶かしだし、増え過ぎると脳の海馬や血管の細胞へ悪影響を及ぼします。マグネシウムは、脳細胞内の酵素の働きを正常化したり、記憶力の低下を予防したりする働きがあるとされています。

適量は?

 こんなにも認知症予防に効果的な牛乳・乳製品は、1日にどれぐらい摂取したらよいのでしょうか。

 牛乳・乳製品は、悪玉といわれるLDLコレステロールを上げる原因と考えられている飽和脂肪酸も含まれていますので、摂り過ぎはいけません。かえって血管性認知症の発症リスクを上げる可能性があります。

 個人のカラダのコンディションによって摂取量を考えなければいけませんが、健康な方であれば、1日の適量は牛乳なら200ml程度でよいと思います。1日の1杯の牛乳が明日の健康を導きます。QOLの高い老後を送るためにも、毎日、牛乳・乳製品を適量摂りましょう。
(文=森由香子/管理栄養士)

森由香子/管理栄養士

森由香子/管理栄養士

東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科 人間生活科学専攻)修士課程修了。 クリニックにて栄養指導、食事記録の栄養分析、食事管理業務に従事。フランス料理の三國清三シェフととともに病院食や院内レストランのメニュー開発、料理本制作の経験をもつ。管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士の立場から食事からのアンチエイジングを提唱している。「老けない人は何を食べているのか」「病気にならない人は何を食べているのか」「体にいい『食べ合わせ』」「太らない人の賢い食べ方」「老けない人の献立レシピ」など著書多数

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