「絵本は字が読めない子でも入り込めます。小さな子に開いて絵を見せると、ブツブツと何か言い始めます。そして、その後、自分でつくったお話を聞かせてくれるんです。きっと、絵を見て何かを想像しながら、自分の感覚で受け止めているんですね」(込田さん)
無色透明の子どもは絵本により色に染まり、感性が育まれていくのだろう。
何歳になっても素晴らしい「夢中」になること
3冊目は、筆者が子ども図書館で選んだ1冊を紹介したい。
孫が好きになったハワイのフラを一緒に楽しみたいとの一心から、ウクレレ教室に通う。そんな祖母の姿を描いた『ばあちゃんのウクレレ』(文芸社/まるたかずよ作、とりやまあきこ絵)だ。
ウクレレ教室に通うばあちゃんは、練習を重ねてもなかなか上達しない。それでも、ばあちゃんはウクレレを勉強することが楽しくて仕方がない。若い頃にチャレンジしたくてもできなかった思いと、年を重ねてやりたいことができるようになった楽しさ。何よりも「孫との楽しい時間」という夢が、ばあちゃんを駆り立てる。
そして、「はじめておもいどおりのおとがでたのです! やっとひきかたがわかってきたのです!」と一所懸命にウクレレを弾く母の姿を、作者である娘が表現する。母と娘、そして孫。愛情と夢のつながりが描かれた1冊だ。
「子ども時代に好きだった絵本を長女に読み聞かせているうちに思い出し、育児休暇中につくってみようと思いました。最初は自分で印刷して母(=ばあちゃん)にプレゼントするつもりでした」と語るまるたさんは、絵本コンテストに応募したが落選した経験を持つ。しかし、コンテストの審査基準や評価の内容が知りたいと思い、出版社に電話をかけ、絵本について丹念に話を聞き、自費出版による1000部の出版を決意した。文章を何度も書き直し、水彩画の絵を描いたとりやまあきこさんと共に、3年以上の試行錯誤を重ねて完成させたという。
「好きなことに夢中になり、挑戦するのは、いくつになっても素晴らしい」――本書を読み終えて、こんな思いに駆られた。
まるたさんの娘さんが書いた題字を目にすると、ほんわかと幸せな気持ちになれる。子どもはもとより、親世代にもおすすめしたい「読後感のいい作品」である。