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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

大事な我が子を将来「引きこもり」にさせないための教育方法…他人事ではない時代に

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士

 社会に出てから引きこもる場合、職場にうまく溶け込めないことがきっかけとしてよくあげられる。だが、職場に溶け込めない人は相当な数に上るのではないだろうか。職場に溶け込めなくても、プライベートな人間関係があれば、引きこもるようなことはないだろう。家の外のどこにも居場所がつくれないから引きこもるしかなくなるのである。

 そこで重要となるのが人間関係力である。

人間関係の早期教育の提唱

 
 私は、今ほど引きこもりが社会問題として注目されていなかった1990年代から、引きこもり防止のための「人間関係の早期教育」の必要性を唱えてきた(『子どもに生きる力を!』創元社、など)。そして、そうした問題を深刻に受け止める人たちからの依頼で全国各地で「人間関係の早期教育」を推奨する講演をしてきた。

 幼い子どもを育てている最中の多くの親たちは、まさかわが子が将来引きこもることになるとは想像もしない。そのため、「人間関係の早期教育」など必要ないとみなし、早期教育というと知的学習の早期教育や英会話の早期教育に走りがちだ。

 だが、100万人以上が引きこもっているとなると、けっして他人事ではないのである。子育てしている親は、そのことをもっと深刻に受け止める必要がある。いくら学習塾や習い事に通わせても、引きこもってしまったら社会に出てその知識や才能を活かすのが難しい。何よりも社会に堂々と出ていけない当人が、非常に厳しい心理状況に追い込まれる。

 私が「人間関係の早期教育」を提唱したのは、かつてのように人間関係力が自然に身につく時代ではなくなってきたからである。

 近所の遊び集団が機能していた時代であれば、わざわざ人間関係を学ばせようなどと親が考える必要などなかった。近所の遊び集団は、いろんな年齢の子どもたちで形成されていた。年上の子もいれば年下の子もいる。そのなかでいろんな目線で人とかかわる経験を積んで成長していった。しかも、仲の良い子ばかりでなく、とくに仲が良いわけではない子もいれば、いじめっ子など仲が悪い子がいることもあった。それでもなんとかして一緒に遊ぶしかない。それによっていろんな距離感で人とかかわる経験を積むことができた。

 ところが今は、近所の遊び集団は完全に消失し、学習塾や習い事、そしてゲームの普及なども影響し、とくに親しいほんの数人の同級生と遊ぶくらいの経験しかないままに大きくなっていくのがふつうである。これでは人間関係力は磨かれない。なんとか同質性の高い学校生活は乗り切れたとしても、異質な人間たちとのかかわりが欠かせない社会生活の中で躓くのも当然と言える。

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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