10月11日に放送されたテレビ朝日系のバラエティ番組『家事ヤロウ!!!』で、料理研究家の平野レミが歴代レシピから「生涯ベスト10」を発表するという企画が放送され、大きな話題を呼んだ。
平野レミといえば、その快活な語り口と驚きのアイデアレシピで人気を博している。そんな彼女が自身のレシピを振り返ってベスト10を決めるとあって、SNSでも注目が集まっていた。
そこで本企画では、平野レミが「生涯ベスト10」と評したレシピから3品を選び抜き、実際にレシピを調理。その美味しさと奇抜なアイデアを体験してみた。
「食べればコロッケ」:面倒な揚げ作業一切なし、“ある物”で衣を再現した逸品
まずは、生涯ベスト10で第5位にランクインした「食べればコロッケ」というレシピから作っていこう。
用意する材料は以下。
・合挽き肉(200g)
・玉ねぎ(1/2個)
・じゃがいも(中4個、約500g)
・バター(20g)
・塩(適量)
・黒こしょう(適量)
・ナツメグ(少々)
・サラダ油(大さじ1)
・キャベツ(4枚)
・コーンフレーク プレーン(1/2カップ)
・パセリ(適量)
・中濃ソース(適量)
本レシピは「見た目は違っても食べれば同じ味」という大胆な平野レミ節が炸裂した一品。コロッケ作りの決め手である揚げの工程がないにもかかわらず、コロッケのような味になるというが――。
作り方は、まず「じゃがいも(中4個、約500g)」を皮のまま水にくぐらせ、ひとつずつラップで包んでいく。次にそれらを600wの電子レンジで、途中上下を返しつつ8分から10分ほど加熱。熱いうちに皮をむき、ボウルに入れてフォークなどで粗くつぶし、「バター(20g)」「塩(適量)」「黒こしょう(適量)」を加えてマッシュポテトを作る。
次に、フライパンに「サラダ油(大さじ1)」を入れ、みじん切りにした「玉ねぎ(1/2個)」を透き通るまで炒める。そこに「合挽き肉(200g)」も投入し、分量外の「塩」と「黒こしょう」、そして「ナツメグ(少々)」を振り、パラパラになるまで炒めていく。
「キャベツ(4枚)」を千切りにして器の底に敷き、マッシュポテト、挽き肉の順で重ね、荒く砕いた「コーンフレーク プレーン(1/2カップ)」、粗みじん切りにした「パセリ(適量)」、最後に「中濃ソース(適量)」をかけて完成である。
コロッケというよりどこか「タコライス」に近いその見た目には驚かされるばかり。量がたっぷりなので、食卓に並べてみんなでワイワイと取り分けるのも楽しそうなメニューだ。
さっそく食べてみる。確かに、これは「食べればコロッケ」としか言いようがないほどに、コロッケの味わいになっている。挽き肉の旨味と玉ねぎの甘み、そこにバターのコクが加わったじゃがいも。特筆すべきは最後に振りかけたコーンフレークだ。これがコロッケの衣のサクサク感を見事に演出してるのだ。普通なら手間のかかるコロッケだが、このレシピならほぼ同じ味でありながら、手間が格段に省けるのでぜひ試してみてほしい。
「長ネギのとぐろ巻き」:平野レミの生涯ベストというインパクト抜群の一皿
次は、今回のランキングで堂々の第1位に輝いた「長ネギのとぐろ巻き」をご紹介。名前からはいったいどんな料理なのか想像がつかないが、本レシピはまさに平野レミ節全開の衝撃的な料理だった。
用意する材料は以下。
・長ネギ(5本)
・豚バラ肉(700g)
・塩(適量)
・黒こしょう(適量)
・小麦粉(適量)
焼くための油すらないその潔さには、若干不安すら覚えるが、さっそくその作り方を見ていこう。
作り方は、まず「長ネギ(5本)」の根っこの部分と青い部分を切り落としておく。次に、長ネギに2〜3mm幅で斜めに隠し包丁を入れ、裏返したら今度はまっすぐに隠し包丁を入れていく。このとき、あまり深く隠し包丁を入れすぎると、長ネギが切り落とされてしまうので、深くても半分くらいで包丁を止めるのがポイントである。
切れ目を入れ終わったら、「豚バラ肉(700g)」を長ネギ1本に5〜6枚ほど巻きつけていく。5本巻き終わったら、全体に「塩(適量)」「黒こしょう(適量)」「小麦粉(適量)」をまぶし、全体をなじませておく。このとき、割としっかり目に塩を振るのがおすすめ。
用意ができたら、フライパンに外側から肉巻き長ネギを、とぐろを巻くようにギュッと敷き詰め、強火で蓋をしないで5分ほど焼く。その後、ヘラなどを使って一気に肉巻き長ネギをひっくり返し、弱火で蓋をして10〜15分ほど焼いていく(難しければトングなどを使って1本ずつひっくり返してもOK)。
最後にお好みで分量外の長ネギを10cmほどに切り、3cmくらいの長さまで縦に細かく包丁を入れ、切り込みを入れた方を水につけることで、先端を花のように開かせた飾りネギを肉の真ん中に置けば完成だ。
フライパン(今回は底の浅いテフロン加工の鍋を使用)のまま食卓に出す大胆さもさることながら、長ネギ1本をそのまま使うという豪快さには驚かされた。だが、しっかりと曲がるように入れた隠し包丁や、肉の脂を想定して焼き油を敷かないこと、さらにギュッと肉を敷き詰めることで肉同士が少しくっつけさせてひっくり返しやすくなるなど、計算された小技も効いている。このあたりはさすがベテラン料理研究家のレシピだ。
キッチンバサミで食べやすく切り、実食してみた。シンプルな味付けながら、素材の旨味がこれでもかと引き出されており実に美味。豚バラで巻くことで、長ネギが蒸し焼きになっており、食感はトロトロ。隠し包丁の隙間に肉の旨みも染み込んでいる。表面は小麦粉のおかげでパリッとしており、肉の旨味を外に逃げないのもさすがのレシピ。お好みで七味などを振っても美味しい上品な味わいだった。
「砂肝ラー油」:茹でて調味料と和えるだけ、超簡単な絶品おつまみレシピ
最後に紹介するのは、番外編で平野レミが「生涯No.1おつまみ」と評した「砂肝ラー油」というレシピを紹介しよう。
用意する材料は以下。
・鶏の砂肝(200g)
・しょうゆ(大さじ1)
・ラー油(2、3滴)
このたった3品で「生涯No.1おつまみ」が作れるという。これだけで果たしてどれほど美味しくなるのか、期待と不安を胸に調理に取りかかっていこう。
作り方は超単純。まず鍋にたっぷりのお湯を沸かし、一口大に切った「鶏の砂肝(200g)」を一気に投入する。その後、鍋が再び沸騰したら「鶏の砂肝」をザルにあけ、よく水気を切っておく。
次にチャック付きポリ袋に「鶏の砂肝」を入れ、「しょうゆ(大さじ1)」「ラー油(2、3滴)」も投入し、よく揉んだ後、空気を抜きつつ封をして、15分ほど漬けたら完成だ。
サクサクかつしっとりした心地よい食感の砂肝に、香ばしいしょうゆとほんのりとしたラー油の辛さが絡み合い、絶妙なバランスに仕上がっていた。シンプルながら、必要な味が必要な分揃った「引き算の美学」を感じる一品である。
平野レミの生涯ベストレシピたちは、大胆なアイデアのなかにも計算された小技の効いたクセになる味わいばかりだった。興味がある人は、ぜひ一度チャレンジしてみてほしい。
(文=TND幽介/A4studio)