あるTwitterユーザーが6月13日に呟いた以下の投稿が大きな話題を呼んでいる。
「スーパーの安いステーキ肉は、すりおろした玉ねぎをたっぷり纏わせて冷蔵庫で1晩。そのあと焼いたところに玉ねぎぶっかけて軽く加熱すれば、バターと塩コショウだけで柔らか熟成ステーキになるって、あるフレンチの名店のチーフシェフの友人に習ったけどこの情報いります?」(原文ママ)
このツイートへの反応はかなり大きいようで、6月22日時点で4.1万リツイート、28.7万「いいね」を獲得している。ツイートには多くのリプライが寄せられ、そのなかには「『シャリアピンステーキ』というレシピに該当するのでは?」という意見も多かった。
そこで今回は、そんなシャリアピンステーキを実際に調理&実食レビュー。スーパーの安い肉が、ちょっとした手間でどれほどレベルアップするのか、大注目レシピの実力を試してみた。
1000円以下のステーキ肉でもOK、お肉を柔らかくする秘訣は玉ねぎにあり
話題となったとツイートには材料の細かな分量などが記されていなかったので、今回はリプライに寄せられていた、あるレシピ動画を参考に調理を進めることにした。
それは、東京・四ツ谷にあるフランス料理レストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」のオーナーシェフ、三國清三氏のYouTubeチャンネルで公開されている「#370『シャリアピンステーキ』赤身の牛肉を楽しむ!|シェフ三國の簡単レシピ」という動画。さっそく動画も参考にして作っていこう。
用意する材料は「牛ランプ肉(2枚)」「玉ねぎ(2個)」「無塩バター(20g+10g)」「サラダ油(大さじ2)」「塩・胡椒(適量)」となっている。動画のレシピには付け合わせ用に「クレソン(適量)」と「フライドポテト(適量)」の記載があったが、話題になったツイートはあくまでお肉だったので、割愛させていただいた。
また、今回はランプ肉が手に入らず、2枚で税込666円の「牛モモ肉(2枚)」で代用したが、ランプ肉は腰からお尻、モモにかけての部位とのことなので、味わいに大きな差はないはず。どちらにせよ、脂身の少ない赤身のモモ肉であれば違いはなさそうだ。
プロのフランス料理人が教えるレシピとあって身構えてしまっていたが、蓋を開けてみれば意外とシンプルな材料で驚かされた。
次に作り方だが、まずは「玉ねぎ(2個)」のうちの1個をおろし金などですりおろしていく。正直なところ、かなり目がやられるのだが、そこは美味しい料理のため頑張っておろしていこう。おろし機能付きのフードプロセッサーなどがあれば、ものの数十秒でできてしまうので、もしそうした調理器具を持っているのなら活用したほうが楽なはずだ。
「牛モモ肉(2枚)」の両面に「塩・胡椒(適量)」を振りかけてなじませたら、すりおろした玉ねぎを投入。よく揉み込んだらラップをかけて、冷蔵庫で1晩寝かせておく。時間はかかるが、こうすることで玉ねぎに含まれるタンパク質分解酵素がお肉を柔らかくジューシーにしてくれるとのことなので、ここは食べる楽しみは翌日まで取っておこう。
一晩寝かせたお肉がこちら。ラップ越しに指で押してみると、若干昨晩よりも柔らかくなった感じがする。期待は高まるばかりだ。
漬け込みが完了したら、味の決め手となる“玉ねぎソース”作りにチャレンジ
次の工程は、味の決め手となるソース作り。お肉は一旦置いておき、まずは昨晩使わなかった残りの「玉ねぎ(1個)」をみじん切りにし、中火強で熱したフライパンに「無塩バター(20g)」を投入。玉ねぎに「塩・胡椒(適量)」を振り、全体を和えるように炒めていく。
この時、焦って強火にしてしまうと焦げ付いて味が苦くなってしまうので、少々時間はかかるが、根気よくヘラなどで混ぜながら全体が飴色になるまで炒めていこう。「玉ねぎを丸々1個使うのは多いのでは?」と内心思っていたのだが、炒めていくうちに量がちょうどよくなっていった。仕上がったら一旦別皿においておこう。
ここから、肝心の牛肉の調理に入っていく。まずは、お肉からおろし玉ねぎを丁寧にぬぐう。このおろし玉ねぎはソースの仕上げに使うので取っておこう。
次に、先ほどのフライパンに「サラダ油(大さじ2)」を投入。中火でお肉を焼いていく。このとき、満遍なく焦げ目が付くように、何度かひっくり返し、お好みの焼き加減に仕上げよう。今回はミディアムレアを目指して、両面で合計4分ほど加熱した。焼けたらお皿に盛り付け、一旦置いておく。
次はソースの仕上げ。みじん切りの玉ねぎだけで終わりかと思いきや、実はソース作りはもう一手間ある。それは、漬け込んで牛肉の旨味が染み出した先ほどのおろし玉ねぎを使うということ。
フライパンに「無塩バター(10g)」を入れ、おろし玉ねぎを投入し、中火で加熱。みじん切りと異なり、こちらはあっという間に飴色になるので少々注意だ。全体が馴染んだら、先ほどのみじん切り玉ねぎも投入し、全体をなじませたらソースは完成。
「シャリアピンステーキ」完成、上品かつ旨味の凝縮した味わいに驚愕……
完成したソースを、先ほど皿に盛っておいたお肉の上に乗せれば、「シャリアピンステーキ」の完成である。
湯気が立ち上るお皿を見つめ、漂う牛肉ステーキの野性味あふれる香りと、焦がし玉ねぎとバターの香りを吸い込む……。では、味わってみよう。
玉ねぎソースをたっぷり乗せ、いざ実食……。
控えめに言って、とても美味しい。
モモ肉ゆえの歯応えはありつつも、安い肉にありがちな歯を押し返すような嫌な弾力はなくなっており、上等な赤身肉を食べているような、絶妙な歯応えに仕上がっている。これが玉ねぎのパワーなのか。
そして圧巻はこの玉ねぎソースだ。玉ねぎと甘みとバターのコクのマリアージュは、舌の上でとろけるよう……。そこに野性味溢れるステーキ肉の旨味が混ざり、食べる手が止まらなくなった。
このレシピ、赤ワインに合うのは言わずもがなだが、お肉の旨味が詰まったこのソースは、ライスやフランスパンと一緒に食べても抜群だろう。
ちょっとした手間で、安いステーキ肉がホテルの一皿のようなゴージャスな味わいに大変身した本レシピ。安いステーキ肉でホテルクオリティで味わいたいなら、ぜひ試してみていただきたい。
(文=TND幽介/A4studio)