年齢を重ねると、体の機能はどうしても若い頃と比べると落ちていく。
それは運動能力だけでなく、脳機能も同様である。若い頃は“キレ者”と評判だった上司が、定年退職後に合ってみると別人のように老け込んで、言葉がはっきりしなくなっていた、ということは決して珍しいことではない。
ただ、逆に70歳、80歳をすぎても頭ははっきりしたままで、言葉も明瞭に発せられる人もいる。両者の違いは何なのか?
「いつも通り」が脳を衰えさせる
『いつまでもハツラツ脳の人』(和田秀樹著、日刊現代刊)は、歳をとり脳の働きが衰えて「ヨボヨボ脳」になる人と、いつまでもクリアな「ハツラツ脳」でいられる人の行動の違いを解説している。
そのキーワードの一つが「いつも通り」だ。
いつものお店、いつもの道、いつものメニュー。いつも通りは安心する。そして年齢を重ねるごとに、「未経験の何か」よりも「いつも通り」を選ぶようになる。歳とともに、人は新しいことを面倒だと感じるようになるのだ。
しかし、実はこれこそが「ヨボヨボ脳」になる兆しである。人の脳は30代、40代に差し掛かると委縮が生じ、それが脳機能の低下につながっていく。
誰にでも訪れる脳の萎縮。それを遅らせたり、回避するために必要なのが「脳を悩ますこと」。そして脳を悩ませるためには、「初めてのこと」「やったことがないこと」「新しい何かを試すこと」にチャレンジすることが最適なのである。
これらの「未体験」には失敗がつきものであり、そのたびに「どうすればうまくいくか」を考えることになる。仮説を立てて試行錯誤したり、失敗を検証して修正することになる。このプロセスを多く繰り返しているうちは、脳は衰えにくいのだ。
「たいていのことはやらなくても想像できる」
一方で、歳を重ねることで分別らしきものが身についてくる。分別自体は悪いことではなく、自分が道を踏み外さないようにしてくれる道徳観でもある。ただ、これが強すぎると新しいことを始める時の足かせになってしまう。
たとえば、様々な経験を重ねたことで「たいていのことはやらなくても想像できる」とタカをくくって新しいことに挑戦しなくなる人がいる。しかし、想像は決して体験に勝ることはない。
また「この年になってみっともない」「たかが知れてる」といった口ぐせがある人も要注意。これらもまた新しいことへの挑戦を妨げる、ある種の「言い訳」なのだ。
そもそも、新しいことにチャレンジすることの目的が脳の衰えを防ぐことなのだとしたら、(成功を目指すとしても)失敗するか成功するかはあまり重要なことではない。むしろ、大事なのは成功を目指すプロセスにある。失敗したら恥ずかしい、うまくいかなかったら格好悪いという考えは捨てた方がいいのだ。
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いつまでも「ハツラツ脳」でいるためには、新しいことにたくさんチャレンジすることが大切だということを紹介したが、やるべきことはもっとたくさんある。本書では、いつまでも脳を若く保つための考え方や行動、人との付き合い方などを解説していく。
長生きを楽しめるのは体や頭が元気なうちだけ。最後まで人生を楽しみ尽くすために、今からやるべきことが本書からはきっと見つかるはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。