思うように体が動かなくなったり、あちこちが痛んだり、病気がちになったり。 年老いることの恐怖は誰もが持っているが、高齢化が進む日本で「認知症」がその最たるものかも知れない。認知症にならず、はっきりした頭で人生をまっとうしたいのが、多くの人の望むところだろう。
認知症には今のところ切り札と呼べるような治療法がない。だから、予防するほかないのだが、予防もまた確立されたものがないのが現状である。「このまま高齢化が進めば、近い将来、がんと同じように、一生で認知症と診断される人の割合が2人に1人になったとしても、私は驚かないでしょう。」 そう語るのは『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社刊)の著者で医師の松原英多さんだ。
認知症は「孤独」から忍び寄る
もともと「群れ」で暮らす動物である人間は、孤独に弱い。ライオンや熊、イノシシと比べて動物としてはか弱いからこそ、群れを作り、協力して生き残ってきた。その過程で言葉が生まれ、言葉によって交流するうちに脳が刺激され、活性化し、多様な文明が生み出されたのである。
だが、現代社会で人間はしばしば「群れ」から切り離される。たとえば家族との別離や、勤めていた会社からの退職などである。群れから切り離され、言葉を交わす相手を失うと、脳に対する刺激が低下する。本書では、これが間違いなく認知機能の低下につながり、認知症の可能性が高まる、としている。
認知症の予防に「孤独」「孤立」は大敵。「そういえば、最近誰とも会話をしていない」と感じたら注意が必要だ。
「思い出すこと」を諦めない姿勢を
年を重ねると、これまで思い出させていたことが思い出せない、人やものの名前が出てこないなど「もの忘れ」がどうしても増えてくる。そうなると、認知症は他人事ではなく、自分にも起こりうることだと自覚されるようになる。こうなると、人は2つのタイプに分かれる。「私はこの先どうなってしまうんだろう」と不安を募らせるタイプと、「ああ、私はもうダメだ」と諦めてしまいそうになるタイプだ。
本書では後者の方を懸念している。認知症を防ぐうえで大切なのは「思い出す」という作業。もの忘れ自体は誰にでもあるもので、その忘れた物事を思い出そうとすることが脳の血流を増やすことにつながり、認知症への移行を遅らせるという。
人の顔は浮かぶのに名前が出てこない。こんな時、一番良くないのは思い出そうとする作業を諦めてしまうこと。自分自身が思い出す作業を諦めないとともに、周りに思い出せない人がいたら、声をかけて思い出す作業を助けてあげることも大切だ。
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誰にとっても無関係ではなく、誰でもなりうる認知症は予防する意識を持てるかどうかで、その後の人生が大きく変わる。
本書では、そのために何をすべきか、何をしない方がいいのかを解説していく。「人生100年時代」も、心身が健康で頭が冴えてこそ楽しめる。人生を最後まで味わうために、一読の価値がある一冊だ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。