カラオケ、なぜ年々、過去曲が歌われる傾向が強まる?ヤンキー経済化を検証
ここで、サンプルとして、前出の03年のカラオケ・ランキングに古さ指数を加えてみる。
1位:『世界に一つだけの花』(SMAP)、発売日:03年3月、古さ指数:0
2位:『涙そうそう』(夏川りみ)、01年3月、2
3位:『地上の星』(中島みゆき)、00年7月、3
4位:『亜麻色の髪の乙女』(島谷ひとみ)、02年5月、1
5位:『Voyage』(浜崎あゆみ)、02年9月、1
同様に過去10年分のカラオケヒットランキングの古さ指数について、上位5位の平均値をグラフ化したものが図表1だ。
13年の古さ指数(上位5位平均)は8.8にまで拡大している、つまり平均8.8年ほど経過した曲がカラオケで頻繁に歌われている。参考までに、13年の詳細は次のようになっている。
【2013年】
1位『女々しくて』(ゴールデンボンバー)、発売日:09年10月、古さ指数:4
2位『残酷な天使のテーゼ』(高橋洋子)、03年3月、10
3位『小さな恋のうた』(MONGOL800)、01年9月、12
4位『ハナミズキ』(一青窈)・04年2月、9
5位『栄光の架橋』(ゆず)・04年7月、9
国民のおじさん化、そして人間関係維持装置としてのカラオケ、ヤンキー文化とヤンキー経済の勃興から「過去曲が歌われるはずだ」という仮説を冒頭で唱えた。
批判を先回りしておくと、1位の『女々しくて』は09年ではなくて再発された11年8月を採用したほうがいいのではないかとか、あるいは『残酷な天使のテーゼ』はある特定の層が歌っているのではないかとか、JOYSOUNDのカラオケヒットランキングとは微妙に違うじゃないかとか、異論が出るかもしれない。
とはいえ、いくつかのランキングを見てみたものの、全体の傾向として「カラオケのヒットチャートは、最新の曲ではなく、過去のそれがランキングされるはず」とした筆者の仮説はさほど間違っていなかったように思われる。当連載タイトルに無理やりこじつけるならば、カラオケの儲けのカラクリは、最新曲ではなく過去の曲にありそうだ。しかも、当然ながら時代とともに過去の曲は積み重なっていく。ロングテールのように、過去の曲が広く歌われ、レコード会社に収益は加算されていく。
●そしてやはり誰もがおじさんになった
筆者が大学4年生の時だった。最新のクラブミュージックを聴き、また同時にHR/HMの新譜もチェックし、プログレ、ファストコア、そしてJ-POPに至るまで、とにかく音楽を摂取していた。年長者が「最近の音楽はわからない、ついていけない」と語るのを見て、「私だけは、そうならないだろう」と確信していた。
しかし、社会人になった瞬間、本当にわからなくなった。仕事の忙しさにかまけて、音楽ショップに行く機会も、ダウンロードする機会も減っていた。だから、前述でいうところのおじさんとは、まさに筆者のことでもある。
それにしても、と思う。
最近の曲はわからないから、昔のしか歌えないというのは、みんな同じだったんだなあ。
<以下、参考データ>
【04年】
※順位・タイトル・アーティスト名・発売年月・古さ指数
1位・涙そうそう・夏川りみ・01年3月・3
2位・世界に一つだけの花・SMAP・03年3月・1
3位・さくら(独唱)・森山直太朗・03年3月・1
4位・ハナミズキ・一青窈・04年2月・0
5位・雪の華・中島美嘉・04年6月・0
【05年】
1位・花・ORANGE RANGE・04年10月・1
2位・涙そうそう・夏川りみ・01年3月・4
3位・ハナミズキ・一青窈・04年2月・1
4位・さくら・ケツメイシ・05年2月・0
5位・さくらんぼ・大塚愛・03年12月・2