全身に症状、命に関わる危険も…虫刺され、正しい/誤った対処法と、使うべき薬とは?
●抗炎症成分で見分ける
具体的に成分で見ると、ステロイド系抗炎症成分(デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド等)が入っているものは、市販薬でも相応に炎症を抑えてくれます。ただ顔や皮膚の薄い箇所へは何度も塗らないようにしたほうがいいでしょう。○○ゾンや○○エステルといった成分を見かけたら、ステロイド剤だと考えて差し支えありません。そして、これらを含む製品の大半が指定第2類医薬品です。
市販薬では「ベトネベートN」(第一三共ヘルスケア)や「フルコートf」(田辺三菱製剤)が、最も効果の高い製品だと思われます。
ステロイド系の次に強い成分は非ステロイド抗炎症剤で、ウフェナマートやブフェキサマクなどの耳慣れない名前ですが、ステロイドとほぼ同等に炎症を抑えてくれる頼もしい成分があります。
薬局では「エンクロン UFクリーム」(資生堂)などの製品が見られます。第2類、第3類の薬で幅広く使われています。
ちなみに上記成分のほかに虫刺され薬に含まれている成分は、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン等)、殺菌成分(ベンザルコニウム、クロルヘキシジン)、麻酔性成分(リドカイン、クロタミトン)、そして清涼感を持たせるためにハッカオイル(またはその成分であるメントール)が含まれています。
●虫刺されは、虫の特定が重要
虫刺されの原因の大半を占める蚊だけ見ても、日本ではアカイエカ、チカイエカ、ヤブカ類など、場所と地域によって種類や持っている病気も違いますが、症状は概ね似たり寄ったりで、薬もほぼ出そろっています。
虫刺されにおいて、刺した虫が持っている毒に対する感受性は個人差がかなり大きく、ほとんど腫れない人や、直径数センチメートルにまで腫れ上がる人、すぐに腫れる人、1~2日たってからじんわりと腫れる人などさまざまです。中には尋常じゃなく腫れ上がり、糜爛(びらん)や、傷口の陥没、さらには全身がだるくて動けない、紅斑症を起こすなど、明らかに異質な反応をする「蚊刺過敏症」という病気が引き起こされることがあります。発症例は極めてまれですが、単なる虫刺されでも、いつもと違うと感じたら専門医で意見を仰ぎましょう。
次に、山などで虫に刺され、蚊に刺された時よりも大きな赤い点が現れ、しこりを帯びて何日もかゆいという症状は、かなりの確率でブユ(地域によってブヨ、ブトと呼ぶ)です。しつこいかゆみやしこりのほか、全身性の症状を引き起こすこともあり、なかなか侮れません。
野山での虫刺されは、どんな虫に刺されたのかを知ることが重要です。病院で治療を受ける場合にも、治療方針が決まりやすくなります。刺された虫の名前がわからなくても、どんな環境で刺された可能性があるのか(例:湿地、昼間の林の中、夜に外灯の下で)など、状況を記録しておくことで虫を推測しやすくなります。
例えば、マダニに刺された場合、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)をはじめ、命に関わる危険な感染症を引き起こす可能性もあるので、刺した虫をできるだけ特定できるように心がけましょう。
また最近は、野山だけでなく都心のホテルやインターネットカフェでも謎の虫刺されが報告されています。
多くの場合、夜寝ている間に刺され、しつこいかゆみとしこりが続き、刺された傷痕が2つセットで残るのが特徴で、これは近年問題となっているトコジラミ(シラミの仲間ではなくカメムシの仲間)による被害です。
また、そうした施設を利用すると、トコジラミは荷物に紛れ込むことが多く、家にまで持ち帰ってしまう可能性があります。万一どこかに泊まった翌朝、トコジラミによる虫刺されが疑われる症例が出た場合、荷物や靴を無防備に家へ持ち込まず、ゴミ袋に入れて殺虫剤で燻蒸するなど、家にトコジラミを持ち込まないように気をつけましょう。
トコジラミは普通の殺虫剤が効きにくく、また卵は薬剤に強いため、万一卵を産みつけられてしまうと根絶は極めて困難で、駆除費用に数万円〜10万円近くかかる専門業者へ依頼しなければならなくなります。