このように拡大し続けるネイル市場ですが、愛知県名古屋市にネイルサロンを展開している有限会社Ars-nova Aspiring Rの代表、川合美絵氏は、昨今のネイル業界は「見た目やテクニカルな面ばかりが強調されており、正しい爪の知識が啓蒙されていません」と警鐘を鳴らしています。
ネイリストとして20年のキャリアを持つ川合氏が、医学博士の東禹彦監修のもとで“爪のための医学書”と自信をみせる『爪のプロフェッショナルが教える 美しい爪 健康な爪 基礎知識』(東禹彦監修/合同フォレスト)を今年2月、上梓しました。
今回、その川合氏に
・爪と健康の関係
・美しい爪をつくる秘訣
などについて話を聞きました。
ネイリストは華やかな仕事ではない
–本書を発刊しようと思った経緯について教えてください。
川合美絵氏(以下、川合) 私がネイリストになった20年前、ネイリストは一般的ではなく、社会的な認知度も高いとはいえませんでした。最近、ネイリストはテレビドラマの影響もあり、女性が憧れる職業のひとつに数えられています。しかし、ネイリストは見た目こそ華やかな職業ですが、やっていることはとても地味な作業です。小さな爪にお客様の要望を踏まえながら、マニキュアやジェルを塗って整えていく仕事です。手先が器用で、同じ作業を続けられるメンタルの強さや根気が必要とされます。人気職業のせいか、甘い考えでネイリストになる人が多いのですが、薄給で仕事もハードワークなので、覚悟が甘い人にはお勧めできません。
本来、ネイリストは爪を熟知していることが望ましいのですが、ネイルのデザインや華やかさを追求し、正しい知識を身につけている人は少ないように感じます。本書を通じて多くの人に医学的な観点からも爪を知っていただきたいと思い、出版に至りました。
–知っておくべき爪の知識はありますか?
川合 爪には、さまざまな要因が複合的に絡んで症状が表れます。例えば、縦や横に線が入ったり、白い斑点が表れたり、厚くなったり、反るなど、さまざまな症例があり、その症例から病気がわかる場合もあります。爪は体の末端ですから、血流やリンパが滞ると最初に症状が表れやすい場所なのです。指先は特に毛細血管の多い部分です。血液の流れが滞れば、栄養や老廃物も流れなくなり、爪に変化が表れやすくなります。爪は体の窓となって、皮膚下で起きている現象を見せてくれます。
また指先には自律神経のツボがあり、長時間爪を押さえることで副交感神経が刺激されて免疫力が上がるといわれています。新潟大学の安保徹教授は、爪周囲を圧迫することでがんやうつ病、更年期など、さまざまな病気が改善した事例を発表しています。