戦後、西洋の栄養学が広まり、「日本人は栄養が足りないから西洋人に比べて体が小さい」などと喧伝され、欧米の食文化が定着しましたが、その結果、がん、心臓病、糖尿病、脳梗塞、高脂血症などの生活習慣病が急増しました。
例えば、現在日本人の死因はがん、心疾患、脳血管疾患ですが、特にがんと心疾患については、1950年以前に主要な死因となったことはありませんでした。逆に老衰で亡くなる割合が激減しています(厚生労働省統計より)。明らかに戦後の食生活の変化によって日本人の体に変化が起きています。また、子どもにアレルギーや喘息などが増加しているのも、食事の影響が大きいと考えられます。高脂肪、高たんぱく、高カロリーの食生活を改めれば、生活習慣病を避けられるはずです。
いまや肉、卵、牛乳は日本の食文化にすっかり溶け込んでいますが、これらのたんぱく質が最も病気を生んでいるといえます。動物性たんぱく質は腸内で有害な毒素を発生させ、血液を汚します。血液の汚れは細胞の働きを鈍化させ、時には炎症を引き起こします。この炎症を「細胞のがん化」といいます。また、動物性たんぱく質を消化するために胃や腸は多大なエネルギーを使います。そのため、多量に肉を食べた場合などは、体のほかの部分にエネルギーが回らず、睡眠をとっても疲労が回復しにくくなるのです。
さらに、腸内の環境が悪化すると、免疫力が低下します。腸内細菌の働きが免疫に直結することが知られており、昨今は腸内細菌のエサとなる乳酸菌の研究が盛んになっています。肉などの動物性たんぱく質を摂取すると悪玉菌が増殖するので、ひいては免疫力の低下につながるのです。
免疫力が低下すれば、風邪をひきやすくなり、花粉症などのアレルギー反応も過剰になります。ほかにもさまざまな病気にかかりやすくなるだけでなく、自己治癒力も低下します。
動物性たんぱく質は不要?
次に、動物性たんぱく質について語られるメリットについて考えてみます。たんぱく質が体をつくるという見解がありますが、これは動物性たんぱく質である必要はありません。そもそも、動物性のたんぱく質を摂取しても、それが人間の体に取り込まれて細胞になるというデータはありません。むしろ、異質な動物のたんぱく質はうまく消化できない可能性が高いのです。
例えば、牛乳を飲んでも栄養素はほとんど人間の体に取り込まれないことがわかっています。主要な栄養素であるカルシウムも骨をつくるために役立たないどころか、牛乳に含まれるリンが骨からカルシウムを奪う可能性まで指摘されています。つまり、牛乳を飲めば飲むほどカルシウム不足になる危険があるのです。
筆者は菜食主義ではなく、動物性たんぱく質を一切排除するように勧めるつもりもありません。しかし、現在の牛、豚、鶏をはじめとする家畜のほとんどは、成長ホルモンや抗生物質が含まれた化学飼料で育てられています。これらを与えられていない動物は極めて少数です。そのような状況から提供されている肉、牛乳、卵を摂取することは極力避けるべきだと考えているのです。
化学飼料を使わずに育てられた家畜の肉、牛乳、卵を、たまに少量楽しむ程度にとどめ、米や味噌を中心とした食生活を送ることが、健康で長生きをするために重要なのではないでしょうか。
(文=豊田美里/管理栄養士、フードコーディネーター)