「Yahoo!ブログ」が消える――。
ヤフーが「現在の市場環境や技術的な運用課題、今後の事業方針など、様々な要因をふまえて総合的に検討した結果、これ以上の継続が難しいと判断した」とし、Yahoo!ブログを今年12月15日でサービス終了することを発表。9月1日には記事、コメント、トラックバックの投稿や編集が行えなくなり、12月15日には閲覧も含めた全サービスが終了となる予定だ。
Yahoo!ブログは、2005年にサービスの提供を開始して以来、約13年の歴史を持つ老舗ブログサービス。「誰もが情報発信できる」というコンセプトのもと、長年愛され続けていただけに、ユーザーからは「情報の遺産が消える」などと惜しむ声も少なくない。
ヤフーは「アメーバブログ」「ライブドアブログ」「Seesaa ブログ」などに引き継ぐことができるツールを発表しているものの、各ブログの管理者が移行のアクションを能動的に起こさなければ、12月15日には数多くのブログが“消滅”することになるのだ。
そもそもインターネット上の情報というのは、膨大な年月にわたって保管されることもある紙資料などと比べて、その永久性をどこまで信用していいものか、不確かな要素が多分にあるのではないだろうか。そして、隆盛を極めていたブログが凋落しつつあるのと同様に、現在はやっているSNSが廃れる日も来るということだろうか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏に話を聞いた。
ブログが廃れ、SNSがはやるのは、端末の変遷から見れば必然
「今回Yahoo!ブログが終了となるわけですが、まずブログという文化自体が、SNSの流行に伴って廃れてきているといっていいでしょう。そもそもブログがはやり始めたのは2002年頃の話なのですが、それまではブログと似たようなコンテンツとして、テキストサイトやWeb日記が一定の人気を博していました。しかし、そこで文章を公開するにはFTPでデータをサーバーに転送しなければいけないなど、ある程度ITに関しての知識と手間が必要だったのです。
ところがブログサービスの登場によって、文章を書いて投稿ボタンを押せば、難しい手順を踏まなくても、すぐに記事をネット上に公開できるようになりました。その手軽さこそ、ブログが人々の支持を獲得した大きな理由だったわけですね。当時は今のようにスマートフォンも発売されていませんでしたし、家庭や仕事場など、デスクトップのパソコンがある場所へ行ってお気に入りのブログを見るというのが、人々にとっての主なネットの使い方だったのです」(井上氏)
ただ、2008年にアップルのiPhoneが日本でも発売されたことによって、ブログ文化にもターニングポイントが訪れたと井上氏は続ける。
「iPhoneのようなスマートフォンが普及するにつれ、人々の主な利用端末はパソコンからモバイルに移り変わっていきました。モバイルでは、いつでもどこでも文章を投稿したり読んだりできますので、ブログのようにじっくり読むタイプのコンテンツは、その“性格”に合わなくなっていったのです。
じっくり読むタイプのコンテンツよりも、“今”おもしろい、“今”何か開催されているなど、瞬間的にそのとき・その場のやり取りを楽しめるようなタイプのコンテンツが、世の中の感覚にハマッていったわけです。
じっくり読んで、コメントに意見を書いてというブログは頭(思考力)を使うコンテンツでした。しかし、多くの人は普段仕事や学校で頭を使って疲れていますので、頭をほとんど使わずに、隙間時間などで手軽に“今”のおもしろさを享受できるTwitterやLINEなどに流れていったのは、仕方がないことだったと思います。
そして、ブログの閲覧者が減るということは広告効果も減少していくということになりますので、スポンサーが広告を出してくれなくなってくるという悪循環が起こっていたのでしょう。ブログを運営する企業側からすると、サーバーを維持しながらサービスの増強・改善も行わなければならず、高いコストをかけている割には利益が上がらないビジネスになってしまったというのが、ブログビジネスの実情なのでしょうね」(同)
このまま音声入力の質が上がれば、新トレンドが生まれる?
“はやり”が速いスピードで流動していくネット時代では、Yahoo!ブログ以外にもサービスを終了していくコンテンツが出てくるかもしれない。
「ヤフーに続いてブログサービスの提供をやめる運営企業も出てくるかもしれないですね。とはいえ、もちろんブログサービスもビジネスの一環なので、企業側にメリットがある場合は継続するでしょう。
たとえばAmeba内のアメーバブログは芸能人のブロガーが多く、それによってAmeba全体のアクセス数が増えると見込まれるため、広告の契約も取りやすいはずです。ブログサービス単体で利益が出ていなくても、全体としてアクセスの吸引力があるうちは、サービスが残っていく可能性は高いでしょう。今回サービスを終了するYahoo!ブログの場合、開設当初は芸能人のブロガーも大勢いたのですが、最近のラインナップを見てみますと更新が止まっていたり、ほかのブログに引っ越してしまったりという芸能人が目立っていましたからね。
また、ブログ以外のサービスに関して言いますと、SNSも当初はTwitterなどのようにテキスト中心だったものが、Instagramなどの画像がメインのサービスがはやるようになり、最近ではTikTokなど動画が投稿の中心になるものが流行しています。これは通信速度やカメラ機能の発達といった、画像や動画再生に適している最近のモバイルのハイスペック化にもよるもの。ですから、これからどんなサービスがはやって、代わりにどんなサービスが廃れていくかというのは、次にどのような端末が主流になっていくかによるでしょう」(同)
栄枯盛衰。ブログが廃れてサービス終了が起こるように、今、栄華を極めているInstagramも、利用者が減少していきサービス終了の憂き目に遭うことも充分に考えられる。
「今は手で端末を持って指でフリック入力するようなスマートフォンがほとんどですが、今後音声入力のクオリティが上がって主流になっていけば、たとえばチャットアプリでも通話を主体とするものが人気になっていく可能性もあるでしょう」(同)
あくまで一例だろうが、井上氏の言うように流行が変遷していけば、画像や動画がメインのInstagramが廃れていき、再び“言葉”(音声入力による文章)がメインのトレンドがやってくるかもしれない。
ヤフーのサービスとしては、誰でも簡単にホームページを開設できるお手軽さが好評だった「Yahoo!ジオシティーズ」も、今年3月末に終了を迎えている。こちらもYahoo!ブログ同様、“ネット資料”とも呼べそうな価値ある情報の喪失が嘆かれることとなったが、そもそもインターネット上の情報を確かなものだと思い込み、個々でのバックアップを怠ることが問題なのではないだろうか。
ブログ界を震撼させたYahoo!ブログ終了のニュースだが、今回のことで困ったと感じている人は、もともとの情報管理体制を見直す必要がありそうだ。ほかのサービスを利用している方も、今一度、情報の保存について見直してみてはいかがだろうか。