3.5GHz帯を活用した通信サービスも開始
そしてもう1つの施策は、3.5GHz帯の活用だ。3.5GHz帯は14年に3キャリアに割り当てられた新しい周波数帯域で、帯域幅が40MHzと非常に広いのが特徴。帯域幅が広いほど高速化が可能で、現在ドコモの中でもっとも帯域幅が広い1.7GHz帯の帯域幅が20MHz幅であることから、3.5GHz帯がいかに高速化に役立てられるかがよく理解できるだろう。
しかもこの3.5GHz帯は、従来の周波数帯で一般的な、上りと下りの通信に別々の周波数を用いるFDD(周波数分割複信)方式ではなく、上りと下りの通信を短い時間に分割することで、同じ周波数帯を用いるTDD(時分割複信)方式を採用している。それゆえTDD方式では、上りと下りの速度を柔軟に変更可能であることから、ドコモでは可能な限り下りの通信に割り当て、ダウンロード速度の高速化に活用する方針のようだ。
実際、3.5GHz帯を用いた通信では、もっとも高速となる1.7GHzとのCAによる組み合わせで、理論値で最大370Mbpsを実現するとのこと。上りの通信にはFDD方式の帯域を用いるとのことで、1.7GHz帯を用いた場合は上りの通信速度が最大50Mbpsになるという。
もっとも、3.5GHz帯は周波数が高いため、電波の特性上直進しやすく、遠くに飛びにくい帯域ともいわれている。そこでドコモでは、3.5GHz帯を広いエリアをカバーするマクロセル用に使うのではなく、都市部のマクロセルの中に設置し、これとCAすることで混雑を緩和するアドオンセルとして活用するとしている。そのため開始当初は、品川や新宿、池袋など、山手線の駅の中でも特に混雑する駅から重点的に3.5GHz帯の基地局を設置していくとのことだ。
キャリアの目的は高速化ではなく都市部の混雑解消
今回の施策によって最大300Mbpsを超える通信速度を実現するドコモだが、今後はアンテナを活用した高速化技術「MIMO」を拡張することで一層の高速化を実現し、理論値で下り500Mbpsを目指すとしている。その先には1Gbps、そして2020年には理論値で最大10Gbpsの通信速度を実現するともいわれる、次世代の通信方式「5G」を導入する考えのようだ。
将来的には4K、8Kの映像コンテンツが増え、それらの利用が広まることを考えれば、たしかに高速・大容量通信が必要であるし、ネットワークの進化が求められるのは理解できる。だが、それを利用するユーザー側の動向を見ると、LTEが整備途上の頃にはネットワークへの関心が非常に高まったものの、全国にLTEネットワークが整備されて以降はユーザーが現在の環境に満足するようになり、関心も日に日に薄れてきている。