NTTドコモとメルカリは2月4日、キャッシュレス決済の分野で業務提携することを発表した。この提携により、NTTドコモの共通ポイントであるdポイントが、メルカリの運営するフリーマーケットアプリで利用できるようになるという。
2019年12月には、auを運営するKDDIも、Pontaを展開するロイヤリティ マーケティングと資本・業務提携し、5月を目途にau WALLETポイントをPontaポイントに統合すると発表している。
大規模な業務提携が続いているポイント業界。どうやら激動の時代を迎えているようだ。そこで今回は、ポイント交換案内サービス「ポイ探」代表取締役で、ポイント業界事情に詳しい菊地崇仁氏に、業界再編の背景やポイント経済圏のこれからについて聞いた。
“○○ペイ”の再編に動きが左右されている
初めに、今回のドコモとメルカリの提携について、この動きの背景を考察していただいた。
「ポイントの統合というよりも、“○○ペイ”の再編として捉えたほうがいいと思います。NTTドコモのd払いとメルカリのメルペイ、この2つのスマホ決済サービスを連携させることが主眼で、そこにdポイントも付けようという考えでしょう。
もちろんNTTドコモには、連携によりdポイントの利用者を増やしたいという思いもあるでしょうし、もともとメルペイの利用でポイントを付与していなかったメルカリは、ポイントサービスを強化したいという狙いもあるでしょう」(菊地氏)
ポイント業界の再編につながる大規模な連携・提携は、スマホ決済サービスが引き金となって起こっているようだ。
「“○○ペイ”というサービスは数多く出てきましたが、結局は通信キャリアが中心となるかたちで集約され始めています。スマホ決済サービスは、当然スマホがなければ決済できないですし、ネットにつながる回線が必要になるので通信キャリアと相性がいいんです。
ですから今回のNTTドコモやauも含めて、キャッシュレス決済で大きな動きを見せているのは通信キャリアが主となっていますし、結局ポイントの統合うんぬんというよりも、キャッシュレス事業で通信キャリアがどう動くかによって、ポイント業界も変化しているというのが現状なのです。どのポイントサービスが、どの“○○ペイ”が、どの通信キャリアを取るかというような戦略的な駆け引きが行われており、NTTドコモは手をつなぐ“○○ペイ”としてメルカリのメルペイを選び、auはうまくいっていないau WALLETポイントをPontaポイントに切り替えてしまおうという発想なのでしょう」(同)
では、au WALLETポイントがうまくいかなかった理由はなんなのか。
「さまざまな提携先でポイントが貯まる“共通ポイント”ではないからです。au WALLETポイントは、auの利用料金の支払いやau WALLETプリペイドカードなどの決済でしか得ることができず、提示などでは貯められないんですね。それがPontaポイントに切り替わると、例えばローソンを利用したことでもポイントが貯まり、au PAYで決済したことでもポイントが貯まるようになる、いわゆる“二重取り”が可能になります。
ドコモやソフトバンクには以前から二重取りができる仕組みがあり、それならばとauから通信キャリアを切り替えてしまった人もいたでしょう。それが今回Pontaと提携したことによって、お得度としては遜色がなくなったので、auを使い続けようと思う人も出てくるのではないでしょうか」(同)
ポイント業界再編の流れは加速していく
Pontaとの提携は、au側に大きなメリットをもたらしそうだ。では、Ponta側にはどのようなメリットがあるのだろうか。
「Pontaポイントとdポイントに、Tポイントと楽天ポイントを加えた、いわゆる“4大共通ポイント”のなかでも、Pontaポイントは貯まりにくいポイントだといえます。なぜなら、自分でポイントを貯めようとしないと貯まらないポイントだからです。例えば、dポイントや楽天ポイントは、ドコモのスマートフォンや楽天のインターネット通販を使っていると、勝手に貯まるんですね。気が付くと巨大なポイントが手に入っていて、それならばポイントを使ってみようかなと、新たにポイントサービスの利用を始める人も多いのではないでしょうか。
Pontaとしては、この自然にポイントが貯まっていかないシステムが致命的に不利だったはずです。しかしauと組むことで、auでスマートフォンの料金を支払えば、勝手にポイントが貯まる仕組みを作ることができる。このことは、業界にもかなり大きなインパクトを与えるのではないかと思います」(同)
最後に、これからのポイント業界の見通しについて語っていただいた。
「これから先の1年、2年で、共通ポイントの提携先は目まぐるしく変わっていくのではないでしょうか。
例えば、ドコモは1月30日にリクルートと業務提携を締結し、20年内にはリクルートのサービスでdポイントが貯まり、使えるようになると発表しています。リクルートはもともとPontaと提携していたわけで、今後は利用者が2つのポイントを選べるようになるようですが、見方によってはauとドコモも提携しているのかという話になってしまいますよね。
ですから、こことここが提携したから、こことここの提携は切れるといったように、玉突き的な再編が起きてくるはずです。今までこのサービスで貯まるのはPontaポイントだったのに、いつの間にかdポイントに切り替わっていたといったようなことが、いくつも発生するのではないでしょうか。利用者側としても、注意していかなければならないですね」(同)
キャッシュレス決済サービスの淘汰に合わせて、通信キャリアを中心に大幅な再編が起きているというポイント業界。近い内に、さらなる動きを見せるかもしれないとのことなので、注目して見守っていきたいところだ。
(文・取材=後藤拓也/A4studio)