KDDIが9日に発表したau向け5Gスマートフォン新料金プラン「データMAX 5G with Amazonプライム」がインターネット上で物議を醸している。NTTドコモがこれに先立つ3日、月間データ容量20GBを月額2980円(税抜)で利用できる新料金プラン「ahamo(アハモ)」を2021年3月に提供開始することを発表していたからだ。
auの新プランは、データ容量上限なし、「Amazonプライム」や動画見放題サービス「TELASA」の利用料がセットとなっている。「スマホ応援割III」や「5Gスタート割」など各種割引を利用すれば月額3760円になる仕様ではあるものの、割引なしの価格は月額9350円(税別)となってしまい、アハモと比較したユーザーなどから「高い」「安くない」と批判が殺到。9日正午ごろにはTwitterで「au解約」がトレンド入りした。
auの新料金プランがここまで大きな批判に直面した背景には、菅義偉首相が官房長官時代から提言を続けていた大手携帯キャリア3社の「携帯電話料金値下げ」政策がある。そのため、発表された新料金プランを単純に比較するだけでは見えてこないものもある。
そもそも、今回のauの新プランは付帯サービス山盛りの「リッチプラン」であり、スマホをなるべく安く使いたい人向けのプランのようには見えない。今後も、携帯各社から次々と新プランが発表されることになるが、ユーザーはどのような視点でこれを受け止めればいいのだろうか。
ahamoはもともとドコモのサブブランドになるはずだった?
スマホ評論家の新田ヒカル氏は次のように解説する。
「アハモが発表された直後なので、ユーザーとしては違和感があると思います。ただ、そこまでKDDIを責めるべきニュースではないと考えます。
まず、ドコモがアハモを発表するまでの日本の携帯業界の流れを見てみます。まず大手携帯キャリア3社があり、そこに格安スマホが出てきてたため、その間をとるものとしてY!mobile(ワイモバイル、ソフトバンク系列)とUQmobile(KDDI系列)というサブブランドがあります。
菅首相は官房長官のころから、携帯料金を下げるよう大手キャリア3社に要請していて、各社が抵抗していました。KDDIとソフトバンクは、『サブブランドを下げて安くしているから、本体ブランドの値下げはご勘弁願えないか』という姿勢で臨んでいたのに対し、菅首相は『それではだめだ。メーンを下げなさい』と応じているようです。
そこでドコモは他2社がサブブランドを下げているのを見て、サブブランドをやろうという計画を以前から練っていたのです。それがアハモです。
ところが、菅首相に『サブブランドだけ下げるという話ではないですよね』と突っ込まれたようで、アハモをサブブランドではなく、メーンブランドの一つのプランとして発表することになったというのが真相です。
アハモはメーンブランドの新しい料金プランでありながら、携帯電話番号ポータビリティー(MNP)が必要だったりするわけです。どう考えてもサブブランドとして設計されていますよね。そもそも、ブランド名も違います。
こうした背景を考えると、アハモと比べるべきはUQになります。UQモバイルやワイモバイルより1000円くらい安いので、今後、UQやワイモバイルが1000円くらい下げてくるのではないか、というのが今後の真の論点です。
アハモと比べられてしまったのはタイミングの問題です。いずれにせよ、UQはこれからも安い料金でいくしかない。KDDIはそれとは別にリッチコンテンツというか、リッチプランとして今回のプランを提供してきたわけです。
それでもKDDIのプランは良いプランではない
今回のプランはアマゾンプライムがバンドルされていますが、正直なところあまり良いプランではないと思います。すでにアマゾンプライムに入っている人や、解約時やMNP時に余計なコストがかかるからです。一つ一つのサービスに加入したほうが安かったり、利便性が高かったりするというところはあると思います。
ただ世の中にはお金持ちの人もいて、『とにかく高いものがよいものだ』と思う人もいます。例えば『高齢で難しいことはわからないけれど、お金には余裕があるから、とにかくすべてのサービスを網羅している一番良いのにしてほしい』という人はこれで良いと思います。ただ、普通の現役世代の人には余計なプランが付きすぎだとは思います」
自身に適した料金プランはなんなのか。これからも注意深く見ていく必要がありそうだ。
(文=編集部)