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高橋暁子「ITなんかに負けない」

TikTokいじめ動画投稿、急増で問題化…学校中に拡散され不登校も

文=高橋暁子/ITジャーナリスト
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TikTokの画面より

 TikTokにおけるネットいじめが話題になるようになった。TwitterやYouTubeにはTikTokに投稿されたいじめ動画が多く転載されている。

 ある動画を見てみよう。動画内では、「打て、打て」という子どもの声がする。地面に丸まって転がった小学生男児に向けて、容赦なくエアガンらしきものを打ち付けているのだ。「何やってんの。スマホ持ってんの」などの別の小学生の声も入っており、リアルな日常だ。明らかにいじめを疑われる動画だが、はじめはTikTokに投稿されたものがTwitterに転載されたようだ。

 TikTokに投稿されたいじめ動画はこれだけではない。他にも、罵倒されながら頭から水をかけられる若い女性や、土下座した頭を踏みつけられる小学生などの、さまざまな動画が転載されている。

 過去には、投稿した動画を不本意に加工・拡散されたり、リベンジポルノ動画が投稿されたこともある。盗撮された動画が投稿された例や、暴力を受けるいじめ行為を撮影・投稿された例、コメント欄に悪口を書き込まれた例などもある。

 これはTikTokでいじめが増えているというより、TikTokの利用が増えたことでいじめの場の一つとなっていると思われる。以前、Instagramにおけるいじめをご紹介したことがあるが、同様に動画や写真なのでわかりやすく、いじめられた側にとっては拡散されたときのダメージも大きくなってしまうという問題がある。

 文部科学省の「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2020年9月)によると、パソコンや携帯電話等で誹謗中傷や嫌なことをされるいわゆる「ネットいじめ」の認知件数は、前年度比1,590件増の17,924件で過去最多となっている。学校別の認知件数を見ると、中学校が8,629件と最多に。小学校では前年度から約1000件の大幅な増加となった。

内閣府の調査によると、令和元年度の小中高校生のインターネット利用率は93%に上り、そのうち小学生の約42%、中学生の約75%、高校生の約90%がインターネットをコミュニケーション手段としている。ネットコミュニケーションが当たり前となったことで、ネットでのいじめも増えているというわけだ。

悪気なくシェア・拡散する子どもたち

 ある学校では、付き合っているときに撮影した彼女側の裸の写真を、別れた後に彼氏側が友だちに送信。その結果、学校中に広まってしまい、女生徒は登校できなくなってしまった。先生たちはこれを問題視し、写真を持っていると思われる生徒にスマホを学校に持ってこさせては写真を削除していった。

「ほとんどの写真は削除させたはずだが、まだ残っているようだ」とある教員は眉をひそめる。現在はその女生徒は卒業して妹が入学しているが、妹に「お前の姉ちゃんだろう」と写真を送ってきた生徒がいるという。

 いじめ動画や写真などを見つけた場合、子どもたちはどうするか。多くの場合、あまり考えずにシェア、拡散してしまっている。「みんながシェアしているから」と周囲にならって拡散してしまい、その結果、学校中に広まることになる。

 クラスのLINEグループなどにシェアする生徒もおり、その結果一気に広まってしまうことになる。しかし代わりに、心配して教員に相談する生徒も現れて、学校の知るところになるのがよくあるパターンのようだ。

 Twitterなどで拡散されているいじめ動画を見ると、「これはやばい」などとコメントを付けて投稿されている。そのような動画には、多いものでは数千回以上再生されているものもある。動画の拡散にしかつながっていず、いじめの傷を深くしているだけのようだが、特に意識してはいないようだ。

TikTokでのいじめ対応とは

 TikTok側もいじめが起きることは想定済みで、対策はしている。いじめ防止を目的に、障害者や同性愛者、肥満など、「身体や精神の状態を理由に嫌がらせやネットいじめの対象になりやすい」とみなされた人々は、他のユーザーから動画が見られないように制限をかけていたこともあるほどだが、これは明らかに間違った対応だった。

 TikTokでは、いじめられている場合、該当するユーザーやコメント、動画を運営会社に通報することができる。特定ユーザーをブロック、コメント拒否も可能だ。コメントは削除したり、そもそもコメントをさせない設定にすることも効果的だ。「プライベートアカウント」にして友だちを承認制にするのもいいだろう。最近は、ペアレンタルコントロール機能も充実しており、子ども側の同意が得られれば保護者がダイレクトメッセージなどを見守ることも可能だ。

 TikTokやInstagramでのいじめは目で見てわかりやすいが、実際のいじめはわかりやすいものばかりではない。滋賀県大津市のインターネット上のいじめに関する対応マニュアルによると、グループからはずされたり、自分のIDを勝手に教えられたり、スマホを持っていないことをからかわれたりなどもネットいじめに該当するとされている。書きたくないことを無理に書かされることなどもあり、見た目だけではわからないことも多い。またそのようなものは、保護者では気づきづらいだろう。

 子ども自身が嫌と感じれば、すべていじめに該当すると考えられるようになった。一番大切なのは、子ども自身の心と命を守ることだ。SNSは没入感がすごいため、いじめられると世界すべてが自分を否定しているように感じて追い詰められやすい。保護者は子どもの様子に目を配り、問題があったら相談してもらえる関係性を築いておくことが大切だ。また、厚労省でLINEなどでいじめ相談を受け付けている相談機関のアカウントを紹介しているので、友だちに追加させておくのもおすすめだ。

(文=高橋暁子/ITジャーナリスト)

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

書籍、雑誌、Webメディアなどの記 事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。 SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などが専門。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎) など著作多数。NHK『あさイチ』『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。令和 三年度教育出版中学国語教科書にコラム掲載中。


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